1981年に開館した宮城県美術館が、2025年度中のリニューアルオープンに向けて改修を進めている。
同館は近代建築の巨匠・前川國男によるモダニズム建築だが、開館から35年が経過し、施設や設備の老朽化が著しく進行していた。そんななか、リニューアルの方向性について示した「宮城県美術館リニューアル基本構想」を2017年3月に、リニューアルの実現に向けて具体的内容を示す「宮城県美術館リニューアル基本方針」を18年3月に策定。19年には移転案も出たが、その後、現存の美術館を改修する方向が固まった。
今回のリニューアルで大きな注目は、収蔵品を可視化する「見える収蔵庫」の導入だ。これは、既存の県民ギャラリーを用途変更して誕生するもので、絵画などを収蔵状態で鑑賞できる、約50平米の新しい収蔵庫。またこれとあわせ、展示室と収蔵庫そのものの拡張も行われる。
海外では、世界で初めて一般の人がすべての作品にアクセスできる収蔵施設として「デポ・ボイマンス・ファン・ベーニンヘン」が21年にオランダ・ロッテルダムにオープンしたが、世界的に見ても「見える収蔵庫」は多くない。
美術館の収蔵庫は課題が多く、増え続ける収蔵品に対してスペースが不足する事態に陥っている。公益財団法人日本博物館協会の「日本の博物館総合調査報告書」(令和元年度版)では、収蔵庫が資料によってどのくらいの割合を占めているかという調査に対し、「9割以上(ほぼ、満杯の状態)」という館が全体の33.9パーセント、「収蔵庫に入りきらない資料がある」という館も23.3パーセントにおよぶ。また、27.2パーセントの館が外部に収蔵場所を設けており、設けていないが必要としているという館も31.9パーセントに達している。