2019.6.24

『センチメンタルな旅』のアナグラム。伊丹豪展「ENTAILMENTS JOURNEY」がアニエスベー ギャラリー ブティックで開催中

国内外で活躍する写真家・伊丹豪の個展「ENTAILMENTS JOURNEY」が、東京・南青山のアニエスベー ギャラリー ブティックで開催されている。展覧会タイトルは1971年に出版された荒木経惟の写真集『センチメンタルな旅』のアナグラムであり、本展を通して伊丹は、当時の荒木の「私写真家」宣言がもたらした国内の写真の流れなどを含めて現代社会や撮影行為そのものを問い、「私」についての考察を深めるもの。会期は7月21日まで。

本展フライヤー

 伊丹豪(いたみ・ごう)は1976年徳島県生まれ。2015年の第27回写真新世紀での佳作受賞を機に写真家としてのキャリアをスタートさせると、これまで日本のみならず、ニューヨークやベルリン、パリ、アムステルダム、台北などで展示やイベントを開催。写真集『study』(2013)、『this year’s model』(2014)、『photocopy』(2017)は国際的に評価されている。

 エディトリアルや広告、ブランドとのコミッションワークまで幅広く手がける伊丹。現在、東京・南青山のアニエスベー ギャラリー ブティックで開催中の伊丹の個展は、「ENTAILMENTS JOURNEY」と題されている。

 タイトルの「entailments」は71年に出版された荒木経惟の写真集『センチメンタルな旅』というタイトルから引用した「sentimental」のアナグラム。本展は、当時の荒木の「私写真家」宣言やその後の写真への「私」の導入、そしてそれらがその後の日本国内の写真の潮流となったことも含め、現代社会や撮影行為への疑いに対する伊丹なりの回答となる。

 また「entailments」は日本語に訳すと論理的帰結を意味し、それは伊丹にとって写真でいう絞りやシャッタースピード、ピント位置など光学的操作の結果がイメージを決定することにあたるという。

 作品制作を通じて、写真が持つきわめて高度な複製性や平面性について考察を続けてきた伊丹。本展では、光学的なテクノロジーの進化やテクニックと呼ばれる側面と自意識との関係、制作をするなかで切っても切れない「私」について考察する。

 伊丹が「きわめて現実に近い複製は、もっとも現実から遠いまったく違う何かである」と語るように、本展では過去にないほどの精度で、誰もが見たことのあるようなものが、見たことのない見え方で、写真として提示されている。