1932年にドレスデン(旧東ドイツ)に生まれ、世界のアートシーンの第一線を走り続けるゲルハルト・リヒターが、世界初公開となる作品を含む全14点を展示する個展「Painting 1992–2017」を六本木のWAKO WORKS OF ARTでスタートさせた。
リヒターは現在ケルン在住。72年のヴェネチア・ビエンナーレをはじめ、数回にわたりドクメンタへ参加するなど、美術史における重要性は誰もが認めるところだろう。
97年には高松宮殿下記念世界文化賞を受賞。11年から12年にかけては、ロンドン、ベルリン、パリで大回顧展を開催し、14年には、スイスのバイエラー財団美術館の個展でみずから展示構成を行い、大きな注目を集めた。17年に、ケルンのルードヴィヒ美術館とドレスデンのアルベルティヌム美術館を巡回した「New Paintings」展では相次いで新作を発表し、現在もオーストラリアのクイーンズランド州立美術館とベルギーのゲント現代美術館で個展を開催している。
本展では、世界初公開となる92年から2000年代の油彩画5点を展示。ケルンやドレスデンの美術館で公開されて間もない最新の油彩画5点のほか、11年に、制作スタイルに大きな変化がもたらされる直前に描かれた抽象画も1点展示。また、風景画《Sils Maria》(2003)や、写真と絵画の関係を考察し続けるリヒターのエッセンスが凝縮された作品として知られる 「Over Painted Photograph」(写真の上に油彩やエナメルで描いた作品)も展示されている。
日本では2005年に金沢21世紀美術館と川村記念美術館で初の回顧展を開催したが、それ以来美術館での個展は行われてない。そんななか、リヒターみずからがアトリエで選りすぐり展示構成を行った本展は、リヒターの現在を知ることができる貴重な機会となっている。