ゲルハルト・リヒター。そのリヒターが暮らす自宅のダイニング・ルームには、ギュスターヴ・クールベの風景画が飾られ、それと隣りあう部屋には、リヒターの自作《シルス・マリア》が飾られている。そんなエピソードをもとに企画されたのが、現在国立西洋美術館で開催中の「リヒター/クールベ」だ。
19世紀半ばに「生きている芸術(アール・ヴィヴァン)」を標榜して写実主義(レアリスム)を創始し、近代絵画史の入り口を切り拓いたギュスターヴ・クールベ。そして、1960年代に資本主義リアリズムの旗手のひとりとして頭角を現して以降、現代美術のフロントランナーとして活躍してきたゲルハルト・リヒター。本展では、一見すると、深いつながりがないようにも見える新旧ふたりの画家の絵画が、リヒターの自宅の様子を模した展示室で出会う。
近代絵画史の始まりに立ったクールベと、その終わりに立ってきたリヒター。現代を生きるリヒターは、145年前に描かれた風景画をどう見てきたのか。2作品を対比することで見えてくる景色があるかもしれない。