三宅砂織は1975年岐阜県生まれのアーティスト。既存の写真を陰陽反転して描き写し、再び印画紙上に現像するフォトグラム作品を制作してきた。膨大な量のイメージが氾濫する現代において、あえてイメージを見るという営為に重きを置く三宅は、時代を超えて人々の眼差しに内在する「絵画的な像」にある種の救済を見出すことを試みている。
2年前より三宅は、戦前ドイツで開催されたベルリンオリンピックに出場したある体操選手の私的な写真コレクションをモチーフに作品を展開。昨年開催された「THE MISSING SHADE 3」(2018、WAITINGROOM)と「20th DOMANI・明日展」(2018、新国立美術館)では、五輪出場・従軍を経験した青年期から教育者として過ごした晩年までの氏の半生を俯瞰する作品群を発表した。
そして今回、これに続く個展「庭園 | POTSDAM」が、東京・銀座のSPACE TGCで開催される。本展は、氏が36年の五輪出場の際にポツダムを訪れたときのアルバムページを取り上げる「The missing shade」シリーズの新作と、それにもとづく三宅のフィールドワークによって制作された映像作品《Garden (Potsdam)》を中心に構成。ポツダムにまつわる個人の追想を起点に、個と時代精神の関係性の層から「絵画的な像」を多声的に抽出していく内容となる。