今年は、葛飾北斎(1760~1849)の没後170年にあたる年。これを記念して、北斎が生涯のテーマとした富士山をどのように描き続けたかをたどる展覧会「北斎 ―富士への道」が、太田記念美術館で開催される。
約70年におよぶ画業のなかで、風景を描き続けた北斎。本展では、70歳を過ぎてからの代表作である「冨嶽三十六景」が誕生するまでの長い道のりをたどるとともに、90歳で亡くなるまでに目指したさらなる境地も紹介する。
「冨嶽三十六景」は、日本各地の様々な場所から見える富士山を描いたシリーズで、北斎が72歳のときに制作を始めたもの。本展には、そのなかから「グレート・ウェーブ」として名高い《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》も登場。迫力ある描写は一朝一夕に得られたものではなく、波の動きを丹念に観察し続けた北斎の努力の賜物だ。
なお展示される「冨嶽三十六景」の24点は、2020年3月から導入されるパスポートの新デザインに採用されたもの。入出国の際にスタンプを押す査証欄のページに作品が印刷される予定となっており、本展ではその全24点を前・後期に分けて見ることができる。
そのほかにも本展では、北斎による約200点の風景画を年代ごとに展示し、表現の変遷を追う。また、そのうち100点には富士山が登場。北斎が趣向を凝らして表現した、様々な富士山の姿を堪能できる内容となっている。