中国に誕生した超巨大美術館。「Ennova Art Museum」で見る南條史生ディレクションの芸術祭

中国・北京近郊の廊坊(ランファン)にあるイノヴァ美術館(Ennova Art Museum)。同館で初となるビエンナーレ、「Ennova Art Biennale vol.01」が5月7日まで開催されている。本芸術祭をレポートする。

文・撮影=安原真広(ウェブ版「美術手帖」副編集長)

展示風景より、ファブリツィオ・プレッシ《Aqua》(2024)

 中国の北京と天津のあいだに位置する廊坊(ランファン)のイノヴァ美術館(Ennova Art Museum)で、初となるビエンナーレ、「Ennova Art Biennale vol.01」が5月7日まで開催されている。2024年10月より中国入国のためのビザが緩和されてより訪れやすくなった中国でいま注目したい、日本人作家やキュレーターも活躍する本芸術祭を紹介する。

イノヴァ美術館の外観

なぜ、日本人キュレーターなのか

 イノヴァ美術館(館長:張子康)は企業家・王玉錠によって2019年に設立され、総合文化芸術コミュニティ「シルクロード国際芸術交流センター」の中にある非営利の美術館だ。建築総面積27万平方メートル超、展示室は3万平米というこの強大な建築は日本人建築家・千鳥義典が「流れる雲」をインスピレーションに設計。展示室総面積は1万2000平米を誇り、展示室のみならず劇場やコンサートホールなどの多機能スペースを有する。

展示風景より、ルーク・ジェラム《Gaia》(2018)

 本ビエンナーレのディレクターには南條史生(キュレーター・美術評論家)が就任。また、キュレーターはShen Qilan(中国)、Andrea Del Guercio(イタリア)、沓名美和の3名で、さらにアーティスト選考委員に畠中実が名を連ねた。

左からキュレーターの沓名美和、南條史生と館長の張子康

 なぜ、北京の芸術祭を日本人キュレーターが手がけるのか。沓名は北京のアートの現状を踏まえつつ、今回の試みについて次のように語った。「北京ではいま、年間150件ほどの美術館がオープンしていて、飽和状態です。マーケットを重視することもあり、アートフェアのような展覧会も多い。果たして継続するのか、展覧会のクオリティはどのようなものなのか、といったことが問われています。だから、今後、アカデミックな知見を重視し、美術館としての価値をしっかりと担保しようとなったときに、国際的な実績を持つ南條さんに入ってもらうことになりました。美術館がもっとも求めていたのは、市場主義ではないアーティストをキュレーションしてほしいということ。南條さん以下、私たちが確固たるアーティストの選定を行うことで、他館とはまったく異なる色を出せたのではないかと思っています」。

展示風景より、リウ・ウェイ《Dimantion》(2021)

 本展のテーマはテーマは「多元未来 – 人生的新展望」とされており、第1章「Sound Consciousness(音声の拡張)」、第2章「Boundary Imagination (創造力の越境)」、第3章「Sustainability and Environment (環境の未来)」、第4章「Multiple realities (後人新世)」となっている。各章の概要を見ていきたい。

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