世界でもっとも知られる日本人芸術家のひとり、葛飾北斎(1760~1849)。江戸時代後期に浮世絵師として登場し90歳で没するまで、約70年に及んだ北斎の画業は、つねに新たな絵画の創造を試みるものであった。
度重なる画号の改名のみならず、画風も大胆に変えつづけた北斎。今回、東京・六本木の森アーツセンターギャラリーで開催される「新・北斎展 HOKUSAI UPDATED」は、《冨嶽三十六景》や『北斎漫画』といった有名作だけに焦点を当てるのではなく、日本初公開となる貴重な作品を含む、北斎の全生涯にわたる画業を展観するものだ。
北斎の絵師人生は、作風の変遷やおもに用いた画号によって、勝川派の絵師として活動した「春朗期」(20~35歳頃)、勝川派を離れて肉筆画や狂歌絵本の挿絵といった新たな分野に意欲的に取り組んだ「宗理期」(36~46歳頃)、読本の挿絵に傾注した「葛飾北斎期」(46~50歳頃)、多彩な絵手本を手掛けた「戴斗期」(51~60歳頃)、錦絵の揃物を多く制作した「為一期」(61~74歳頃)、自由な発想と表現による肉筆画に専念した「画狂老人卍期」(75~90歳頃)の6期に分けられる。
本展では、この6期構成で、20歳のデビュー作から90歳の絶筆にいたる約480件の画業を通覧することができる(会期中展示替えあり)。国内外に所蔵される北斎の名品のほか、近年更新されたおもな研究成果とともに発見・再発見されてきた作品も展示される本展。十数年ぶりに東京で開催される大規模な北斎展に期待が高まる。