ルート・ブリュック(1916~99)は、フィンランドを代表するアーティスト。蝶類の研究者でありながら、画家としても活動していた父・フェリクスの影響で、幼少期より自然や美術に親しむものの、12歳の頃に両親が離婚。母とともにヘルシンキに移住した。
建築家を志した学生時代を経て、グラフィックデザインに転向すると、その繊細で詩的な世界観が名窯・アラビア製陶所の目に止まり、42年に美術部門の専属アーティストとして入所。それ以降、同製陶所の専属アーティストとして約50年にわたって活躍した。
初期の愛らしい陶板から、膨大なピースを組み合わせた晩年の迫力あるモザイク壁画まで、幅広い作品を手がけたブリュック。重厚でエレガントな釉薬の輝きと、独自の自然観に基づく繊細な図や形態は、いまもなお多くの人々を魅了している。
今回、東京ステーションギャラリーで開催されるルート・ブリュック展は、約200点のセラミックやテキスタイルなどを通じて、ブリュックの多彩な仕事を網羅する日本初の展覧会となる。初期と後期でドラマティックに変わる作風の謎、確かな伝統技術に裏打ちされた細やかな凹凸による躍動感を堪能できる。