フィンランド陶芸の源泉に触れる。
「フィンランド陶芸展」が
目黒区美術館で今夏開催

目黒区美術館が日本とフィンランドの外交関係樹立100周年を記念し、「フィンランド陶芸ー芸術家たちのユートピア」を開催。本展は、黎明期である19世紀末から黄金期と呼ばれた50〜60年代までのフィンランド陶芸を体系的に紹介する。会期は7月14日〜9月6日。

アルフレッド・ウィリアム・フィンチ 花瓶 1897-1902 アイリス工房 コレクション・カッコネン Photo by Niclas Warius

 「フィンランド陶芸ー芸術家たちのユートピア」は、フィンランド陶磁器やガラス作品の世界的コレクターでもあるキュオスティ・カッコネンのコレクションを中心に、137点のフィンランド陶芸を展示するもの。「フィンランド陶芸の萌芽」「近隣諸国の影響を受けて」「フィンランド陶芸の確立」「フィンランド陶芸の展開」「プロダクト・デザイン」の5章構成となっている。

 1章では、アール・ヌーヴォーが「ナショナル・ロマンティシズム」と称された19世紀末から20世紀初頭に制作された壺や花器などのフィンランド陶芸が紹介される。フィンランドにもたらされたアーツ・アンド・クラフツ運動の影響による伝統への回帰や、ロシアからの独立の気運も高まって、当時世界を席捲していたアール・ヌーヴォーが独自の発展を遂げた当時の様子を伺うことができる。

花瓶《カレヴァ》 1906-1914 アラビア製陶所 コレクション・カッコネン Photo by Niclas Warius

 また2章では、近隣諸国の影響を受けて陶磁器のデザイン性を高めようと躍進した20〜30年代後半に着目。国を代表するアラビア製陶所のプロダクトから、テューラ・ルンドグレンやミハエル・シルキンらの作品が並ぶ。

 このほか3章では、「オーガニック・モダニズム」と称されたトイニ・ムオナの筒花瓶や、立体造形として陶芸を追究したキュッリッキ・サルメンハーラの壺などを展示。ビルゲル・カイピアイネンおよびルートブリュックらの、絵画的表現(ピクトリアリズム)に富んだ陶板や皿が紹介される4章や、日本の美術・工芸との関わりを探る最終章へと続く。

 数多くのコレクションとともに、黎明期から黄金期までのフィンランド陶芸を体系的に追うことができる本展は、フィンランド陶芸の源泉に触れ、そしてその奥深さを知る贅沢な機会になるだろう。

編集部

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