「文化の神様」である菅原道真を祀る福岡・太宰府天満宮では、2006年から「太宰府天満宮アートプログラム」を開催している。人々が行き交い集う場としての「開放性」と、1100年以上昔から変わらない天神信仰の場としての「固有性」という2つの性質を併せ持つことから、この2つのキーワードをテーマに掲げ、第一線で活動するアーティストを招いて多彩なアートやデザインの紹介を行っている。
そんな太宰府天満宮で、フィンランドとつながりが深いアーティストである陶芸家の石本藤雄と、写真家の津田直による「太宰府、フィンランド、夏の気配。」が開催される。
石本藤雄はテキスタイルデザイナーであり陶芸家。1970年からヘルシンキを拠点とし、74年から06年までマリメッコにてデザイナーとして活動。89年からは軸足を陶芸へと移しており、現在にいたるまでフィンランドを代表する陶器メーカーであるアラビア社のアート・デパートメント部門において陶芸作品を制作している。フィンランド政府工芸工業賞、カイ・フランク賞など受賞歴多数の実力派だ。広大な自然へ向けたまなざしから導き出されるモチーフと、独自の感性で施される色彩の豊かさで知られている。
いっぽう、東京と福岡の二拠点で活動している写真家の津田直は、世界を旅しながら、古代から続く人と自然との関わりを映し出すという作風で知られている。2001年より個展を中心に多数の展覧会を開催。10年に芸術選奨新人賞美術部門受賞するなど、精力的に活動している。
「太宰府、フィンランド、夏の気配。」は、そんなふたりの作品を同時に楽しむことができる。宝物殿では「実のかたち」と題し、太宰府天満宮の象徴である梅の実や夏に旬を迎える冬瓜、あるいはヤマモモなど様々な果物の実をモチーフとした石本の陶器作品が、文書館では「辺つ方(へつべ)の休息」と題して、北欧の人々が短い夏を楽しむサマーコテージやフィンランドの離島に到来する初夏を写し取った津田の写真作品が展示される。
津田の作品が展示される文書館は、1901年に菅原道真の「御神忌千年大祭」の記念事業の一環として建てられた施設で、通常は一般公開しておらず、本展期間中は特別公開となる。また、会期中は花菖蒲や梅といった境内の自然も見頃を迎える。それにあわせて祭事やライトアップも行われる予定なので、展覧会とともに初夏の太宰府天満宮を楽しむことができる。
なお、18年4月28日から5月27日にかけては、福岡・天神の三菱地所アルティアムにて、津田の写真展「エリナスの森」が開催されるので、こちらも合わせて注目したい。