小説家、マンガ家として活動しながら、ドローイングやシルクスクリーン、写真、鏡、光や音などを用いて多様な制作を行ってきた小林エリカ。今回、その個展「野鳥の森 1F」がYutaka Kikutake Galleryで開催される。
小林は1978生まれ。目に見えないものや家族に着想を得て、小説やマンガを手がけてきた。2014年には小説『マダム・キュリーと朝食を』(集英社)で第27回三島由紀夫賞、第151回芥川龍之介賞にノミネート。ほかの著書に、父とアンネ・フランクの日記をモチーフにした『親愛なるキティーたちへ』、放射能の科学史をたどるコミック『光の子ども 1.2』(ともにリトルモア)などがある。
また小林は、11年の東日本大震災以前から原子力エネルギーについてのリサーチを行い、自身の家族の個人史と重ね合わせた作品を制作。森美術館で開催された「六本木クロッシング2016展 僕の身体、あなたの声」では、ドローイングとネオン、音からなるインスタレーション作品《日出ずる(Sunrise)》を発表した。
今回は、東京電力福島第一原子力発電所を訪れた経験をもとに、かつてその構内に存在した植物の植生に着目。現在はそのエリアは放射線量を抑えるためにモルタルに覆われているが、以前は「野鳥の森」と呼ばれる場所だったという。
本展では、「野鳥の森」に存在した花々を想起させるような新作ペインティングを発表。目に見えないものたちの、より繊細な記憶にせまる作品を見ることができる。