戦後写真の旗手、奈良原一高。その連作「無国籍地」が島根県立美術館で展示へ

同時代に活動した写真家・奈良原一高と画家の堀内康司。それぞれの連作の受贈を記念した展覧会「奈良原一高《人間の土地》と“グループ「実在者」”」が、島根県立美術館で開催される。会期は11月14日〜2019年2月11日(第1部)、11月16日〜2019年2月4日(第2部)。

奈良原一高 無国籍地 1954 島根県立美術館蔵

 奈良原一高は1931年福岡県生まれ。56年に東京・松島ギャラリーで初個展「人間の土地」を開催。無名の新人としては異例の評価を受け、同展は戦後日本の写真を大きく転換する起爆剤となった。

 そんな奈良原は、55年に堀内康司、真鍋博、靉嘔、池田満寿夫が結成した「グループ『実在者』」にオブザーバーのような形で参加していた。

奈良原一高 無国籍地 1954 島根県立美術館蔵

 当時、大阪砲兵工廠跡地で廃墟を撮影していた奈良原。今回展示される「無国籍地」シリーズには、メンバーのひとりである堀内の案内で東京・王子の軍需工場跡を撮影したものも含まれている。当初、奈良原はこれを代表作である「人間の土地」に組み込もうとしていたほど、重要な作品だ。

堀内康司 廃墟 1954 島根県立美術館蔵

 堀内の遺族が「廃墟」のシリーズを島根県立美術館に寄贈し、それに応じて奈良原が「無国籍地」シリーズの全点を寄贈することで実現した本展。60年以上の時を経て当時ふたりが見ていた廃墟を表す作品が並び、知られざる「グループ『実在者』」と奈良原の「人間の土地」シリーズとの関係が浮き彫りになる。

編集部

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