橋本関雪(1883〜1945)は現在の神戸市生まれ。幼い頃より儒学者の父の影響で漢学に親しんだ。伝統的な日本画の流派である四条派を学び、竹内栖鳳(たけうちせいほう)に入門。のちにその門を離れ、他の画家たちとは一線を画し孤高の中で制作を行う。
関雪は四条派を基礎としつつ、中国の古典や西洋画に着想を得て独自の画風を展開。四条派の写実的な動物の描写を取り入れた新南画や新古典と呼ばれる絵画を次々と発表し、官展で受賞を重ねるなど、大正〜昭和期の画壇を代表する画家となった。
足立美術館の関雪コレクションは全29点に及ぶ。《夏夕》や《訪隠図》などの官展出品作をはじめ、昭和に入り制作された《猿》や《涼宵》など動物画の数々には、当時関雪が愛情を注いだ動物たちへの鋭い観察眼や繊細な筆使いが遺憾なく発揮されている。
本展は、生涯にわたる関雪の作品を一覧する貴重な機会。ぜひ足を運び、大正・昭和を代表する日本画家の名作に触れたい。