「近代日本画の父」と呼ばれる狩野芳崖には、4人の高弟、岡倉秋水、岡不崩、高屋肖哲、本多天城がいた。彼らは芳崖の晩年に師事し、芳崖の絶筆《悲母観音》の制作を間近で目撃するとともに、芳崖の顕彰に努めた。
彼らは芳崖の死後、東京美術学校(現・東京藝術大学)に入学。「芳崖四天王」と称され、一目置かれる存在となる。彼らはその後も日本画において四者四様の才能を発揮した。本展では、そんな知られざる「芳崖四天王」の人と画業を紹介する。
岡倉秋水は岡倉覚三(天心)の甥で、芳崖の顕彰に積極的に取り組んだ。岡不崩は、はじめ狩野友信に入門、のちに芳崖に師事。晩年は本草学に傾倒し数多くの著書を残した。
高屋肖哲は、自ら「仏画師」を称し高野山に参籠。生涯を通じて観音像などを多く描いた。また、本多天城は東京美術学校を卒業後、同校で助教授を務めた。
本展には、この4人の作品のほかにも、師・芳崖を中心に、狩野派の最後を飾る画家たちの作品が並ぶ。また、四天王と同じ時代を生き、岡倉覚三とともに日本画の革新に挑んだ横山大観、下村観山、菱田春草らの作品も集結。芳崖のつくった多様な近代日本画の水脈を辿ることのできる内容となっている。
なお、後期(10月10日)からは「芳崖四天王」の作品に加え、《仁王捉鬼図》や重要文化財の《不動明王》《悲母観音》など、狩野芳崖の三大名作が揃い踏み。注目を集める展覧会となりそうだ。