泉鏡花(1873~1939)は、明治後期から昭和初期かけて300編あまりの作品を生み出した作家。幻想文学の先駆けとして知られ、代表作に幽玄世界を表現した『高野聖』などが挙げられる。また、明治の世俗を批判的に書いた『夜行巡査』『外科室』などの観念小説で一躍脚光を浴び、その後『照葉狂言』では幻想的でロマンチシズムな独自の世界を築いた。
その鏡花文学に登場する女性を、腕、足、腹などの関節に球を入れてつくられ「生き人形」とも呼ばれる球体関節人形として見せる展覧会が開催されている。手がけたのは、球体関節人形作家として知られる吉田良と、その指導を受けたドールハウス・ピグマリオンの作家たち。吉田は1973年より人形制作を始め、83年には自由が丘にスペース・ピグマリオンを設立。「球体関節人形展~DOLLS OF INNOCENCE~」(東京都現代美術館)への出品後、映画や書籍に作品が起用され、作品写真集や技法書を出版。写真家としても活動しており、人形写真集を多く手がけている。
本展は、鏡花文学と球体関節人形のコラボレーションに加え、明治~大正期に鏡花作品を飾った木版、石版口絵、肉筆の手紙なども展示。様々な角度から鏡花の生涯とその作品世界を紹介する。