「ことば」を切り口に文学と美術の多様な表現を紹介する本展。ともに群馬県前橋市にあるアーツ前橋と前橋文学館で同時開催される、全国的にもめずらしい美術館と文学館の共同企画展だ。
参加作家は、前橋市出身の詩人・萩原朔太郎から、ni_ka、文月悠光といった現代の詩人、また河口龍夫や山川冬樹といった言葉の存在を再認識させるような作品を生み出すアーティストなど様々。
前橋文学館では、地域ゆかりの作家から、コンクリートポエトリーをはじめとする前衛的な活字表現までを紹介。アーツ前橋では、未来派やフルクサスなどの20世紀の美術運動から現代作家までを中心に、活字に留まらない表現を通して人間と言葉の関係を考える展示を行う。
本展の開催に合わせ、コンセプトブックも発行。書家の石川九楊や作家の温又柔などによる対談や、建畠晢、ミヤギフトシなどの書き下ろし原稿を収録し、本展のテーマについてさらに読み深められるものとなる。また、前橋文学館とアーツ前橋をつなぐ千代田通りを中心とした「街なか回遊プロジェクト」など、イベントも多数開催される。
展覧会タイトルの「ヒツクリコ ガツクリコ」という不思議な言葉は、萩原朔太郎が「憔悴するひとのあるく路 / 夕焼けの路(前橋市民に捧ぐる詩)」という未発表作品のなかで、夜の街を詩人が歩いていく様子を記したもの。誰かのもとへ向かって歩き、出会い、言葉を投げかけるという人の営みを、本展を通して改めて考えてみたい。