19世紀末から20世紀初頭にヨーロッパで起こった芸術運動「アール・ヌーヴォー」の旗手として知られるアルフォンス・ミュシャ(1860〜1939)。今回、静岡市美術館は、ミュシャ作品を美しく彩った女性たちに焦点を当てた「ミュシャ展〜運命の女たち〜」を開催する。
美しい女性像を描いて人気を得たミュシャは、幼少期からの女性との交流が制作に影響したと推測されている。とくに、早世した初恋のひと、ユリエ・フィアロヴァー(愛称ユリンカ)の面影は、長きにわたってミュシャの作品のなかへ投影されている。初期の素描や城館の装飾デザインなど、その当時に交流があった女性にまつわる作品を紹介していく。その他、初公開となる『少女と鳩』など、貴重な素描や挿絵原画が並ぶ。
パリに移ったミュシャは、大女優サラ・ベルナールの劇場ポスターで作家として大きく邁進。数多くの女性を優美かつ繊細に描きだし、独創的な模様を組み合わせた「ミュシャ様式」と並行して写実表現も続けた。アール・ヌーヴォーで重要な位置を占めたパリ時代から、晩年の祖国色あふれる作品群を通観すれば、ミュシャの芸術家としての才能を存分に感じ取れるだろう。
本展では、ミュシャと同郷の個人コレクターが親子三代にわたって収集した秘蔵コレクションから約150点を厳選。さらに、静岡展特別出品として、静岡市在住のミュシャ作品の世界的収集家・尾形寿行のOGATAコレクションも約100点展示される。「運命の女たち」というタイトルが示すとおり、初恋に始まり、栄華を極めたパリ時代、そして祖国で過ごした晩年に至るまで、ミュシャ作品を彩った女性たちに焦点を当てた内容となる。