猫は古くから日本人にとって暮らしに寄り添う身近な存在であり、多くの物語や絵画に取り上げられてきた。特に江戸後期には浮世絵や歌舞伎など、様々な媒体で猫が登場する「猫ブーム」が到来。ねずみを捕まえる益獣や人々を脅かす化け猫、福を招く縁起物といった、様々な姿で描かれた。
本展では浮世絵や招き猫、おもちゃ絵、版本などから、猫を題材にした表現を5章構成で展示し、人々に愛されてきた猫の姿を紹介する。
「第1章 江戸の暮らしと猫」では養蚕の作業場で益獣として重宝される姿や、名所絵に佇む姿など、人々の暮らしに寄り添う猫を描いた作品がならび、「猫ブーム」の土壌ともいうべき、江戸の人々が持つ猫へのイメージを探る。
猫のイメージは可愛らしいだけではなく、歌舞伎や絵入りの読み物である合巻本では復讐譚に欠かせない存在として扱われてきた。「第2章 化ける猫」では人々を脅かす化け猫を描いた作品を紹介する。
天保12〜13年、「猫ブーム」の中心を担ったのが、浮世絵師・歌川国芳による戯画。「第3章 人か猫か、猫か人か」では国芳の作品を中心に天保の戯画を展示し、「猫ブーム」の背景を探る。
「第4章 福を招く猫」では、招き猫の先祖とされる江戸・今戸周辺で作られた土人形「丸〆猫」を紹介。さらに会場では全国各地の招き猫、約80体が並ぶ。
「第5章 おもちゃ絵になった猫」では、江戸から明治にかけて作られた子供用の浮世絵、「おもちゃ絵」を紹介。かるた、双六、なぞなぞなど、様々な遊びの中で、題材として現れる猫の姿は、いかに猫が当時の人々にとって身近な存在がであったかを示す。
なお、会場には「おもちゃ絵」を体験できるコーナーも設置され、さらに会期中にはワークショップや講演会などのイベントも多数開催、「猫ブーム」を体感できる展示となっている。