昭和初期の東京を描いた「日本のゴッホ」長谷川利行の回顧展が開催。新発見の大作とともに画業をたどる

昭和初期の東京を自由奔放な筆致と明るい色彩によって描いた画家・長谷川利行の回顧展が全国5ヶ所で開催される。2018年3月24日〜4月22日開催の福島県立美術館を皮切りに、東京、愛知、福岡、栃木を巡回する。

長谷川利行 水泳場 1932 キャンバスに油彩 90.9×116.7cm 板橋区立美術館蔵

 長谷川利行(1891〜1940)は京都・山科生まれの画家。昭和初期の、モダンな東京の喧騒や、内面に寄り添うような人物像などを、自由奔放な筆致と明るい色彩によって描き出した。その画風や、波乱に満ちた生涯から、「日本のゴッホ」とも呼ばれる。

長谷川利行 夏の遊園地 1928 キャンバスに油彩 112.0×163.0cm 個人蔵

 青春時代を文学に傾倒し過ごした利行は、30歳頃になると画家を志し上京。独自に技法を体得し、30代半ばには二科展や一九三〇年協会展などで受賞を重ねるなど、その才能を開花させた。

長谷川利行 靉光像 1928 キャンバスに油彩 45.7×37.8cm 個人蔵

 熱狂的な支持者やコレクターを生んだその作品は、靉光や井上長三郎、吉井忠ら池袋モンパルナスの作家たちにも大きな影響を与えた。しかし、放浪癖と酒癖で生活は破綻し、浅草、上野、新宿、銀座など各地を転々とする生活のなか、病に倒れ49歳の生涯を終える。

長谷川利行 青布の裸婦 1937 キャンバスに油彩 52.8×70.5cm 個人蔵
長谷川利行 湯浴する女 制作年不詳 ガラスに油彩 15.4×10.6cm 福島県立美術館蔵(河野保雄コレクション)

 利行の没後70余年を過ぎるが、未だその生涯の把握、評価が半ばということもあり、近年でも新たに作品が発見されることがある。本展では、その新発見となった《カフェ・パウリスタ》や《水泳場》といった大作を含む、油彩、水彩、素描、ガラス絵など、約140点の作品を紹介。その画業を通して、「生きること」「描くこと」の原点を見つめ直す。

長谷川利行 カフェ・パウリスタ 1928 キャンバスに油彩 53.0×72.8cm 東京国立近代美術館蔵

編集部

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