5階のテーマは「物質と感情のエンタングルメント」。愛と欲望、リビドーと記憶、そして、それらをめぐる複雑な情動が、物質とイメージの絡まり(エンタングルメント)として表現される。ジャン=ミシェル・オトニエルとニコラ・ビュフの作品が対面する空間に、水戸部七絵によるヨーコとレノンの愛の肖像や、アレクシス・ロックマンによるテクスチュアが特徴的な《The Riverbed》(1994)などが並ぶ。
「エンタングルメントというのは、量子力学において量子のもつれを意味する言葉です。オトニエルの《pink lotus》(2015)の形態はそれを感じさせますし、水戸部さんの作品にしても、どこまでが物質でどこからが情報なのかの境目がないような絵画だと言えます。そうした作品が並ぶなかに、さらに表現主義的な作品を持ってきたら空間が全壊するだろうと予想し、ニコラ・ビュフの装飾的な作品《ポーリア(カルトゥーシュ)》(2014-16)を展示しました。うまく『LOVE』が表現されたのではないでしょうか」。



個人のコレクションをキュレーションする機会が初めてだったという長谷川。3年余りで膨大な数の作品を収集し、美術館を設立して公開する植島幹九郎のバイタリティと知識欲への驚嘆に加え、期待を最後に口にした。
「この美術館は渋谷教育学園の敷地に設置されていて、植島さんは学校との関係をとても大切にされています。イデオロギーや『正しさ』が絵に描いた餅のようになってしまっている現代において、アートはエシカル(倫理的)なものを学び、リアリティを他者と共有するために重要ということをよく理解されています。事物に対面して学ぶセンソリーラーニングによって新しい知を得る場としてのインスティテューションの可能性についても、共感してくださいました。コレクションを使ってキュレーターの卵を対象としたワークショップを企画するなど、教育に関する構想もおありなので、これから生まれる展開を楽しみにしたいですね」。



















