兵庫県立美術館「石岡瑛子 I(アイ)デザイン」インタビュー。現代人の心に響く石岡瑛子の仕事が美術館と共鳴する【2/8ページ】

唯一無二の特異な表現者

 「石岡瑛子は、唯一無二のクリエイションの体現者であり、日本の戦後デザイン史における“特異点”」。世界初の石岡の評伝『TIMELESS 石岡瑛子とその時代』(朝日新聞出版)を2020年に上梓した河尻は、まずそう語る。全国5館を巡回する本展(島根県立石見美術館と、富山県美術館に今後巡回)は、河尻が石岡の妹でアートディレクターの石岡怜子、アートディレクターの永井裕明とともに「Team EIKO」として企画・監修した。会場に流れる石岡の声は、2011年に河尻が行った生前最後のインタビューのものだ。

河尻亨一『TIMELESS 石岡瑛子とその時代』(朝日新聞出版)

 「すごい人だったが、それゆえに一面的な切り取りで語られたり、矮小化されたりと誤解されやすい面もある。本展では、石岡のタイムレスな作品群と性別や国籍、年齢等あらゆるステレオタイプと戦った軌跡をどう展覧会で紹介し、世の中に発信していくかをチームで議論と検討を重ねた。石岡のクリエイションの核心を探る中で浮上したキーワードが、『Iデザイン』だった」(河尻)。

 この言葉は、石岡が渡米後の主な仕事を記録した著作『私デザイン(I DESIGN)』の題名でも用いられている。河尻によると、この「I」は、閉じた「エゴ(自我)」と異なり、他者に触発されて自身を鍛錬して生まれる「私」を指す。外部に開かれ、作者の強靭な個性と思考に裏打ちされた表現は歳月を経ても古びない。そんな比類ない「Iデザイン」を、なぜ石岡は成し遂げられたのか。3つのポイントを河尻は挙げた。

4幕展示風景より、石岡瑛子によるブックデザインの数々

編集部

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