• HOME
  • MAGAZINE
  • INTERVIEW
  • 【独占インタビュー】LABUBUはいかに誕生したのか。生みの親、カ…

【独占インタビュー】LABUBUはいかに誕生したのか。生みの親、カシン・ロンが語る『THE MONSTERS』10年の歩みと創作の原点【4/4ページ】

ストーリーテラーとして生きる

──近年、絵画制作の比重が大きくなっています。絵画という表現は、アートトイやそのほかの創作と比べて、どのような意味を持っているのでしょうか。

ロン 私がいちばん好きなのは、やはりストーリーテリングです。絵本はもちろん、じつは絵画も私にとってはその延長線上にあります。表現方法は違っても、作品を通して物語を語るという点では同じなんです。

 いっぽうで、アートトイの制作は少し性質が異なります。商品として世に出す以上、チームでの議論や判断が必要になります。私がアイデアを出しても、みんなで話し合いながら「こちらのほうが良いのではないか」「こうしたほうが伝わりやすいのではないか」と調整を重ねていきます。

 アートトイがチームワークによる創作だとすれば、絵画はとても個人的な表現です。描きたいと思ったものをそのまま画面に入れることができる。誰かに相談する必要もありませんし、自分の感情やアイデアを自由に反映できます。もちろん、様々な仕事を抱えているのでプレッシャーもあります。でも、絵を描いている時間は私にとってもっともリラックスできる時間なんです。アートトイをつくったり、絵本を描いたり、様々な仕事をしていますが、絵画はそのなかでも特別な存在ですね。

カシン・ロンが東京展のために描きおろした新作絵画 写真提供:POP MART JAPAN

 以前パリをテーマにした作品を描いたときも、自分が惹かれる要素を数多く取り入れました。今回の東京を題材にした作品も同じです。私は東京によく来ますし、この街には個人的な思い入れがあります。その魅力を自分なりの視点で描き込みました。そういう意味で、絵画は私にとってもっとも自由で、純粋に楽しめる創作なのだと思います。こうした複数の活動を行き来できることをとても楽しんでいます。

 個展やグループ展が続く時期には8〜9ヶ月ほど絵画制作に没頭することもありますが、しばらくすると別のこともやりたくなってくるんです(笑)。そんなときにアートトイや絵本の制作に取り組み、また絵画へ戻る。その繰り返しが私には心地いいんです。だからこれからも特定のジャンルに自分を閉じ込めることなく、様々な方法で創作を続けていきたいと思っています。

──すでにLABUBUを知っているファンと、今回初めて『THE MONSTERS』に触れる人では、異なる見方があると思います。それぞれの来場者に、どのような体験を持ち帰ってほしいと考えていますか。

ロン 私がこの展覧会でいちばん伝えたいのは、『THE MONSTERS』にはトイやプロダクトだけではない世界があるということです。多くの方はLABUBUをフィギュアやぬいぐるみを通して知っていると思いますが、その背景には絵本や絵画、そして物語があります。

 私自身、創作のなかでもっとも大切にしているのはストーリーテリングです。自分の強みもまた、「物語を語ること」だと思っています。今回展示されている原画や絵本、絵画作品を通して、その部分も感じ取っていただけたらうれしいですね。

麻布台ヒルズのパブリックエリアに展示されている巨大な『THE MONSTERS』のオブジェ 写真提供:POP MART JAPAN

 LABUBUを以前から知っているファンの方々には、「このキャラクターにはこんな背景があったのか」と新しい発見をしてほしいですし、初めて『THE MONSTERS』に触れる方には、たんなるキャラクターではなく、ひとつの物語世界として楽しんでいただけたらうれしいです。

 そしてなにより、この世界にはまだ続きがあります。現在、新しい絵本の出版を進めており、2025年にはすでに原稿を出版社へ提出しました。海外出版社とのプロジェクトのため刊行までに時間はかかりますが、順調に進めば2027年に日本語版を含めて出版される予定です。

 近年の作品のなかでもとくに多くの時間と情熱を注いだプロジェクトなので、私自身とても楽しみにしています。この展覧会をきっかけに、『THE MONSTERS』の物語そのものにも興味を持っていただき、新しい絵本へとつながっていけばうれしいですね。

約2000体のLABUBUぬいぐるみが並ぶ「ぬいぐるみハウス」にいるカシン・ロン 撮影:稲葉真

編集部

Exhibition Ranking