神奈川県の横浜美術館で「毛利悠子 Recompose ― 第60回ヴェネチア・ビエンナーレ日本館帰国展」が開催される。会期は7月24日~11月23日。

毛利悠子は1980年神奈川県生まれ。磁力、重力、空気のゆらぎといった自然現象をメインモチーフに、日用品などの身のまわりのものや機器を組み合わせたオブジェを介して、不規則な動きやノイズ音を現出させるインスタレーションで知られている。2024年のヴェネチア・ビエンナーレでは日本館代表作家として選出され、国際交流基金のコミッション、イ・スッキョンのキュレーションのもとで個展「Compose」を開催した。本展はこの展覧会が約2年の時を経て凱旋するものだ。

ヴェネチアでの展覧会タイトル「Compose」は、語源である「com=共に」「pose=置く」に由来し、コロナ禍や紛争などによって分断の危機にさらされる世界に向け、「共存」「共生」の意味を問いかけるものだった。本展では、その展示が横浜の地で再構築(Recompose)される。
地下鉄の水漏れから朽ちゆく果物まで。即興性が生み出す「水」の循環
展覧会は毛利が継続して取り組んできた2つの代表的なシリーズで構成される。

「モレモレ(Moré Moré[Leaky])」は、東京の地下鉄構内各所で頻発する水漏れと、それを駅員たちが手近な道具を使って対処するさまに着想を得たシリーズで、10年以上にわたって展開されている。さまざまな日用品を用いて、即興的な水の循環システムがかたちづくられる。

もうひとつの「デコンポジション(Decomposition)」は、テーブルに置かれた果物をモチーフとしたシリーズだ。果物に刺された電極を通して、ゆっくりと朽ちていく過程における内部の水分量の変化が、不規則な音と光を生み出す。
両シリーズに共通する、水の循環や変容を可視化したこれらの作品は、空間全体に拡がる光や音、匂いによって鑑賞者の五感に働きかける。空間のそこかしこに遍在するエネルギーや、ものともののあいだに生じる目に見えない関わりあいや循環といった、普段見過ごしがちな自然の摂理が、ユーモアの感覚を交えて表現される。
異例となる横浜への凱旋。新設されたガラス張りの空間と響き合う
通例、ヴェネチア・ビエンナーレ日本館の帰国展は東京・京橋のアーティゾン美術館で開催されるが、本展は毛利の出身地である神奈川県の横浜美術館での開催となる。水をメインモチーフとした毛利の作品が、イタリアと日本の水の都をリレーするかたちとなる。
会場となるギャラリー9は、同館の改修工事を機に新設されたガラス張りの展示室だ。美術館前の公園の刻々と変化する情景と光を取り込むこの空間は、あらゆるものの予期せぬ変化や移ろいゆく姿を可視化する毛利の創作と親和し、作品のポテンシャルをさらに引き出すこととなるだろう。

























