エンターテインメントと美術、双方を花開かせる
──物語の舞台についても伺いたいです。『花緑青が明ける日に』では「郊外」や「再開発」といった風景が重要な要素になっています。こうした作中の風景には、どのような思いがありますか。
四宮 出発点は東日本大震災の後で個人的に体験した風景の変化です。ある日アトリエの前の原っぱが、あっという間に一面のソーラーパネルに変わってしまったことがありました。当時はメガソーラーという言葉もなく、景観についても問題視される前で、原発事故のあとに新たな電力エネルギーとして太陽光発電が全国各地で必要とされていました。当時の私はその一変した景色を、どう捉えてよいかわからない風景として見ていました。
その風景のなかを車に子供を乗せて走っていたとき、子供が「あれ海?」と車窓を見て言ったことがありました。そこで海のように光っていたのはソーラーパネルの反射だったんです。そのときにふと思い出したのが、かつて私の故郷にあった海が埋め立てられた、という話でした。こうした海にまつわる思い出が、自分のなかで物語の種になっていきました。

──アニメが昔から好きだったとおっしゃっていましたが、とくに影響を受けた作品はありますか。
古橋一浩監督の、全4話からなるOVA作品『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 追憶編』(1999)です。『週刊少年ジャンプ』で連載されていた和月伸宏さんによる同名マンガを原作にしたアニメですが、本作はテレビ、シリーズとは異なる、大人をターゲットとした前日譚的な作品です。
剣技の表現もさることながら、戦闘よりも芝居の繊細さが際立つ作品でした。動きの派手さや美術の精度が前面に出ており、確かなリアリティがあった。キャラクターが世界のなかで生きて、歩き、話している感覚が伝わってくる作品で、人を切って暴れるばかりでない日常がアニメで描けることが強く印象に残りました。
──今回、四宮さんは劇場アニメーション作品という大きなプロジェクトを完成させたわけですが、この経験を活かしつつ、今後どのような挑戦をしていきたいですか。
これからもアートとエンターテイメント、双方の要素を用いながら作品をつくっていきたいと思っています。『花緑青が明ける日に』の完成によって、その思いをまたひとつ、実現することができました。次は展覧会のようなかたちで、エンターテインメントと美術の融合を試みたいなと思っています。

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