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BLUMの30周年。ティム・ブラムが振り返る日本での軌跡と、次なるステージ【3/4ページ】

日米アートシーンの架け橋に

──BLUM(旧Blum & Poe)は1994年にサンタ・モニカで設立されましたね。この30年のなかでもっとも印象的だった、あるいは影響を与えた展覧会はなんですか?

 思い出に残る主要な展覧会としては、まず村上隆さんの初個展(1997年)と、2回目の個展「Back Beat」(1998年)が挙げられます。とくに「Back Beat」では、彼のもっとも重要な彫刻作品である《HIROPON》と《My Lonesome Cowboy》が発表されました。

 また、ポール・マッカーシーとの展覧会も非常に印象的でした。彼とは2度展示を行いましたが、なかでも「Tokyo Santa」プロジェクトは強烈で重要な展覧会でした。これは、私が抱いていた双方向性への関心を反映したものであり、彼を東京に連れて行き、その後彼がこのプロジェクトをロサンゼルスに持ち帰りました。ロサンゼルスでは彼が村上さんと奈良さんを招き、レクチャーも開いてくれたのです。

 1995年に開催された奈良さんのギャラリーでの初個展も印象深いものですね。また、初期の展覧会のなかでは、マーク・グロッチャンの初めての「Butterfly」の絵画展もとても驚異的でした。

 その後、ギャラリーは歴史的なグループ展にも深く関わるようになり、現在ではそれがギャラリーアイデンティティの大きな一部となっています。とくに重要な展覧会として、2012年に開催されたもの派の初の大規模展「Requiem for the Sun: The Art of Mono-ha(太陽へのレクイエム:もの派の美術)」が挙げられます。この展示はギャラリーの方向性を大きく変え、多くのアーティストとの新たなプロジェクトを開くきっかけとなりました。

「Requiem for the Sun: The Art of Mono-ha」展(2012、BLUMロサンゼルス)の展示風景より
Photo by Joshua White. Courtesy of the artists or Estates and BLUM Los Angeles, Tokyo, New York

 また、ヨーロッパの芸術運動「コブラ」に関する展示も印象的で、その後、そのアーティストたちをより深く掘り下げる機会となりました。当ギャラリーはつねに幅広いテイストを持っており、それが特徴です。村上さんや奈良さんから、純粋な抽象絵画、よりコンセプチュアルな作品、歴史的な作品に至るまで、様々な作品を紹介してきたことが、当ギャラリーの魅力を保つ要因となっています。

──今年、BLUM東京は設立10周年を迎えます。東京のギャラリーにとってとくに重要なマイルストーンはなんですか?

 日本国内外のバランスを見つけることが重要だと考えています。例えば、東京での最初の展覧会のひとつとして、2015年に開催した奈良さんの美しい展覧会「Shallow Puddles」が挙げられます。また、2020年の浜名一憲と大井戸猩猩の2人展、2021年のセシリー・ブラウンの日本初個展、そして現在開催中のトーマス・ハウセゴの個展「MOON」も非常に素晴らしいです。今年の秋には、マーク・グロッチャンの展覧会や再び奈良さんの展覧会も予定しています。このように、ローカルとグローバルのバランスを保ちながら、その交流を続けています。

奈良美智「Shallow Puddles」展(2015、BLUM東京)の展示風景より
© Yoshitomo Nara. Courtesy of the artist and BLUM Los Angeles, Tokyo, New York. Photo by Kiezo Kioku
浜名一憲と大井戸猩猩の2人展(2020、BLUM東京)の展示風景より
© Kazunori Hamana, ooido syoujou. Courtesy of the artists and BLUM Los Angeles, Tokyo, New York. Photo by Kiezo Kioku

──日本のアートコミュニティとはどのような交流を行っていますか?

 私が長年日本に関わってきた経験が大きな影響を与えています。私たちはつねに、海外から日本に来た人々に対して、日本の奥深い部分を紹介する手助けをしてきました。表面的なものではなく、あまり知られていない日本の文化やアートを伝えることに努めてきました。

 日本のチームも非常に優秀で、国内での影響力は非常に大きく、深いものがあります。オープン当初、同世代の多くのギャラリーがアジアで拠点を開く際には香港を選んでいましたが、私たちは市場ではなくそこに根付くアートを優先したかったため、東京を選びました。アートが最初にあり、市場は後からついてくるものだと考えています。

 現在、日本は様々なレベルで再び注目を集め、人々の関心を引いていると感じます。日本のビジネスや官僚制度も劇的に変化してきています。例えば、ギャラリーの保税許可が実現したり、「Tokyo Gendai」のような新しいアートフェアが開催されたりしています。

Tokyo Gendai 2024におけるBLUMのブース
Photo by SAIKI. Courtesy of the artists and BLUM Los Angeles, Tokyo, New York

──日本のアートシーンやアートマーケットにどのような変化が見られるのか、もう少し詳しく教えていただけますか?

 コレクターが増え、現代美術を収集し、関係を築くことに対する理解も深まっています。また、利他的な考え方も広まってきたように感じます。深いコレクターコミュニティが形成され、新しい世代が様々な影響を受けているのを見るのは、とても興奮しますね。

 さらに、日本のアートシーンは国際化が進んでいると感じます。以前は、美術館が官僚的で、作品購入や出張のための予算も少なかったですが、状況は5年前と比べて大きく変わっています。また、Tokyo GendaiやArt Collaboration Kyoto、アートウィーク東京などのイベントには、多くの人が訪れています。海外の美術館関係者も来日し、日本の美術が西洋に向けて発信されているのは明らかです。私たちもその流れに非常に関与しています。例えば、スペイン・ビルバオのグッゲンハイム美術館では奈良美智の回顧展が開催されており、来年はニューヨークのディア・ビーコンで菅木志雄の大規模な個展が予定されています。

──日本のアートコミュニティにおける若い世代についてはどう思いますか?

 若い世代は、世界がよりフラットに見えていると思います。彼らは世界を観るだけでなく、そのなかで過ごすことにも快適さを感じています。また、新しいギャラリーも数多く存在し、日本のアートだけでなく、若手の国際的なアーティストとも素晴らしいプロジェクトを展開しています。非常にエキサイティングな状況だと思います。

編集部

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