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INTERVIEW - 2020.1.23

アート・バーゼル香港ディレクター、アデリン・ウーイに聞く香港マーケットの現状とアートを買うメリット

今年で8回目となるアジア最大のアートフェア「アート・バーゼル香港」。世界各国から241のギャラリーが参加するこのフェアは、アジアマーケットのハブとしてつねに注目を集めてきた。しかし不安定な状態が続く香港で、今年のフェアはどのような姿勢で開催を迎えるのか?

聞き手=編集部

アデリン・ウーイ (C) Art Basel
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──昨年から続く香港情勢の混乱はまだ収束していません。そのようななか、バーゼル香港はどのような姿勢で次のフェアを行うのでしょうか?

 「Cautiously Optimistic(慎重に、楽観的に)」です。今年は世界31の国と地域から241のギャラリーが参加しますし、来場予定のVIPの数も減っていません。「アジア」という観点で見ると、日本を含む各地域から手厚いサポートを受けていると実感しています。

 とくに香港のギャラリーたちは、こういうときだからこそやり抜くという姿勢を見せています。中国を含む東アジア側も、厳しいときだからこそサポートしたいと言ってくれる。

会場となる香港コンベンション&エキシビション・センター (C) Art Basel

──今回の香港の混乱で、香港マーケットには影響がありましたか?

 不思議なことに、依然として盤石だと思います。例えば、昨年11月にとある香港のギャラリーで行われた展覧会では出品作品がソールドアウトしました。サザビーズやクリスティーズなどのオークションは順調ですし、セールスはむしろ上がったくらいです。

──ウーイさんが2014年にディレクターアジアに就任されて以降、香港のマーケットやアートシーンはどのように変化してきたと思いますか?

 地元にもともとあったギャラリーに加え、ガゴシアンやペロタン、ハウザー&ワースなど、国際的なメガギャラリーが進出してきたことは大きいですね。こうしたギャラリーは成長し続けており、香港という土地により強く根を張ってきています。

 いっぽうでアートセンター「大館(タイクン)」やCHAT(チャット / Centre for Heritage, Arts and Textile)、K11といった文化施設もできてきました。こうした香港アートシーンのパズルを埋める最後のピースが、今後開館するM+(エムプラス)だと思います。

 こうしたマーケットやギャラリー、美術館などすべての側面を考えたとき、香港はやはり変わらずアジアのアート・ハブだと感じます。

アート・バーゼル香港2019の会場風景より、塩田千春《Where Are We Going?》(2017-18) (C) Art Basel 

──アジア太平洋地域において、香港以外にウーイさんが注目している国や地域などはありますか?

 各国それぞれ異なる変化があるので、ひとつに絞るのは難しいですが、個人的にはインドと東南アジアに注目していますね。加えて、日本でも若いコレクターが増えているのを実感しています。前澤友作さんのような人を見て、アートのコミュニティに入っていく人が多いのかもしれません。

──日本ではビジネスの側面からアートに対する注目が高まり始めています。マーケットを知り尽くしたウーイさんは、ビジネスマンに対してアートを買うメリットをどのように説明しますか?

 まず投資としてアートを買うことは絶対にお勧めしません。アートへの投資は、株などに期待するようなリターンはありません。

 作品を買うということはアーティストだけでなく文化や社会全体を支援すること。アーティストは社会を写す鏡です。文化全体を大事なこととして考え、それをサポートするという目的でアートを購入することをお勧めします。

 アートをコレクションするというのは1年で終わるものではなく、人生をかけた長い旅です。もし、最初は投資が目的だったとしても、作品は場所を必要としますし、メンテナンスも大変。作品は赤ちゃんみたいに世話をしなければならないのです。なのでアートコレクションは投資目的だけでは続けていけません。そして続けるうちに、(作品単位ではなく)作家をサポートしたいというふうに心境が変わっていくことが多いのではないかと思います。

アート・バーゼル香港2019の様子 (C) Art Basel

──アート・バーゼルは今年で50周年です。なぜバーゼルは50年も成長しながら継続することができたのか、ウーイさんのお考えをお聞かせください。

 ひと言で言えば「質」だと思います。そしてそれに尽きるとも言える。来場者に対しても、出展ギャラリーに対しても、質を担保すること。我々はつねにギャラリーや顧客からのフィードバックを受け、改善を続けてきました。これが50周年の秘訣ではないでしょうか。