『見ることの力──二十世紀絵画の周縁に』
ワシリー・カンディンスキー、アンリ・マティス、ジャクソン・ポロック、山田正亮ら、20世紀を代表する画家たちに焦点を当てた絵画論。「描く」以前に「塗る」行為として始まった西洋絵画を、作家の一方的な視覚表現ではなく、鑑賞者を含む身体・環境・時間との相互作用の所産とみなし、その現代的意味を探究する。著者が副館長を務める東京国立近代美術館の所蔵作品にも多く言及しており、同美術館の案内書としても楽しめる。(近藤)
『見ることの力──二十世紀絵画の周縁に』
中林和雄=著
水声社|6000円+税
『AKA ANA 赤穴』
今夏、MEM(東京)で開催された「corpus」展も記憶に新しい、フランス人写真家アントワーヌ・ダガタの最新写真集。本書は、写真家集団「マグナム」に在籍し、世界中を旅しながら各地の地下社会(娼婦や密売人ら)に潜り込んで活動を展開してきたダガタの、日本でのプロジェクトに絞って構成される。新宿で出会った7人の女を撮影した表題作「赤穴」や東日本大震災後の立入禁止区域の建物をとらえた「福島」などが紡ぎ出す、人間の欲求と生死をめぐる物語。(近藤)
『AKA ANA 赤穴』
アントワーヌ・ダガタ=著
赤々舎|8000円+税
『都市は人なり「Sukurappu ando Birudo プロジェクト」全記録』
これまでもストリートにまつわる活動を重ねてきたChim↑Pomが真っ向から「都市」をテーマに掲げたプロジェクトの記録集。解体が決まった新宿・歌舞伎町のビルでの個展「また明日も観てくれるかな?」、建築家と共同で設計・施工した高円寺のバラック風ビルを舞台にした個展「道が拓ける」の2企画について、作品展示やオープニングパーティーの模様などをメンバーらの座談会とともに振り返る。日本の都市の猥雑なありように斬り込む批評的試み。(中島)
『都市は人なり「Sukurappu ando Birudo プロジェクト」全記録』
Chim↑Pom=著
LIXIL 出版|2800円+税
『Graphic Design Theory グラフィックデザイナーたちの〈理論〉』
1世紀に及ぶグラフィックデザインの歴史には、デザイナーが個人と社会の揺れ動きのなかでつくり上げた思想が確かに息づいている。未来派、構成主義、バウハウスといったモダニズムの革新的なタイポグラフィ、ヨーロッパからアメリカへと伝わった戦後のインターナショナルスタイル、さらにはデジタルテクノロジーを駆使した近年の作品群まで。社会に参画する視覚言語としてのグラフィックデザインを、歴史と理論の両面から学ぶための入門書。(中島)
『Graphic Design Theory グラフィックデザイナーたちの〈理論〉』
ヘレン・アームストロング=著
ビー・エヌ・エヌ新社|2400円+税
(『美術手帖』2017年11月号「BOOK」より)