『日系ブラジル人芸術と〈食人〉の思想 創造と共生の軌跡を追う』
半田知雄、ジョルジ・モリ、トミエ・オオタケら、戦後ブラジルで活躍した日系人画家に焦点を当てた、新たなブラジル近代芸術論。西洋人と先住民の対置によってナショナル・アイデンティティを鼓舞し、ブラジルの「モデルニスモ」を牽引した「食人主義」を手がかりに、ブラジルと日系人芸術家との相互的な「食人」関係を描き出す。巻末には、日系人芸術家のインタビューや、オズワルド・デ・アンドラーデ『食人宣言』(1928)の初邦訳を収録。(近藤)
『日系ブラジル人芸術と〈食人〉の思想 創造と共生の軌跡を追う』
都留ドゥヴォー恵美里=著
三元社|4200円+税
『資本主義が終わるまで』
資本主義社会の終焉を予見するアーティスト、丹羽良徳の作品から導き出される現代社会の問題点をめぐって、ケリー・オブライエン、藤田直哉らが寄稿。丹羽の共産主義シリーズの著作『歴史上歴史的に歴史的な共産主義の歴史』(2015)についての思考メモ、韓国の中絶問題を取り上げた《存在しなかった人々を命名する》(2016、未実施)のプロポーザルなども掲載。作家の構想と第三者による客観的視点が拮抗し、議論の地盤を築く一冊。(中島)
『資本主義が終わるまで』
丹羽良徳ほか=著
Art-Phil|1388円+税
『アート×テクノロジーの時代 社会を変革するクリエイティブ・ビジネス』
世界にも認められるような、高いものづくり技術を誇る現代日本。いまやアートは天才性を有した個人の産物ではない。商業芸術/純粋芸術の垣根を越えて、「会社組織」でアートを生み出す時代が到来している。国内外の動向に目を光らせるアート・コレクターの著者が、IT技術を駆使して次世代型のアート・ビジネスを切り開くチームラボ、ライゾマティクスらの活動を紹介。彼らの企業戦略、運営体制に迫り、未来の社会・都市設計を展望する。(中島)
『アート×テクノロジーの時代 社会を変革するクリエイティブ・ビジネス』
宮津大輔=著
光文社|920円+税
『音楽と建築』
ル・コルビュジエの下で構造計算を担当したことでも知られる、ギリシャ系フランス人の現代作曲家ヤニス・クセナキスのエッセイ集(クセナキスに師事した高橋悠治による新訳)。ブリュッセル万博のフィリップス館(1958)で実現された「立体的建築」、大阪万博鉄鋼館で展示された電子音響作品《響き・花・間》(1969)の基礎となった組み合わせ論的構成、「垂直の宇宙都市」のシェル構造など、数学が開いた音楽と建築の可能性に関する全8編。(近藤)
『音楽と建築』
ヤニス・クセナキス=著、高橋悠治=編訳
河出書房新社|2800円+税
(『美術手帖』2017年9月号「BOOK」より)