まとめ
本シンポジウムは、アーティスト、キュレーター、研究者が一堂に会し、ジェンダー、領域横断性、地域文化、現代視覚文化といった観点から「工芸の現在地」を議論した。目的はふたつあった。第一に、日本の工芸をポストコロニアルな地域史の文脈から再考すること。第二に、欧米で展開されている工芸のポストモダン的議論を紹介し、日本の文脈に接続することである。参加者数は約100人にのぼり、従来の日本工芸関連のシンポジウムに比べ異例の盛況を呈した。とりわけジェンダー問題に関心を持つ聴衆が多く、議論の深さに刺激を受けたという感想が寄せられた。従来の「日本工芸」の安定的イメージに留まらず、現代的課題を批評的に共有し議論する場を提供したことは大きな成果である。
まとめとして菊池は、「日本」「人種」「伝統」「工芸」という概念をグローバルな視点から問い直しが始められたことを強調した。さらに、人間の本能的な行為としての「つくる」営みがAI時代にも揺るがない価値を持ちそうであること、女性作家の静かだが確固たる挑戦が未来においてより可視化されるであろうことを指摘し、シンポジウムを締めくくった。
以上のように、本シンポジウムは、日本の工芸を取り巻くジェンダー的・制度的課題を批評的に浮き彫りにし、同時にグローバルな視座をもって未来の工芸の可能性を提示する場となった。学術的にも実践的にも大きな意義を持つものであったといえる。




















