ジャパノラマ
1970年以降の日本の現代アート
2017年にパリのポンピドゥー・センター分館で開催された展覧会の日本語版書籍。1994年に行われた「戦後日本の前衛美術」展を継承し、1970年代から現代に至るまでの日本のアート、写真、建築、ファッション、サブカルチャーなどを領域横断的に紹介する。身体、ポップ、協働といったキーワードから導き出した6つのカテゴリーに作品を分類し、「群島」をイメージした有機的なつながりのもとでそれぞれの傾向を考察。企画を務めた長谷川祐子のほか、小林康夫、毛利嘉孝、清水穣、星野太らが寄稿。(中島)
『ジャパノラマ 1970年以降の日本の現代アート』
長谷川祐子=編
水声社|3000円+税
つくる理由
暮らしからはじまる、ファッションとアート
ファッション、現代美術などを中心に、現代の日本を拠点として活躍する若いつくり手たちへのインタビューをまとめた1冊。それぞれの活動の内容や創作のきっかけは異なるものの、共通する転機を見出すこともできる。例えば、2011年に起こった東日本大震災は多くのつくり手に影響を与えている。彼らの言葉からは、大きな知覚の変動をもたらすような事態に対して、直接的に応答するだけでなく、つくり続けるという継続的なかたちで関わり続ける方法を教えられる。(岡)
『つくる理由 暮らしからはじまる、ファッションとアート』
林央子=著
DU BOOKS|2300円+税
ニッポンの芸術のゆくえ
なぜ、アートは分断を生むのか?
「表現の不自由展」炎上騒ぎがあった2019年のあいちトリエンナーレ、コロナ禍における芸術文化の不要不急論、兵庫県豊岡市の文化事業を推進した中貝宗治市長の落選。近年、アートや演劇の周辺で、芸術文化の存在意義が問われる出来事が立て続けに起こっている。危機的状況が続くなかでこれからの文化政策はどのような針路を取ればよいのか。津田大介と平田オリザが、アートマネジメントによる人材育成、地方芸術祭の本来の役割などをトピックに、実務的な側面から芸術文化のあるべき姿について意見を交わし合う。(中島)
『ニッポンの芸術のゆくえ なぜ、アートは分断を生むのか?』
津田大介、平田オリザ=著
青幻社|2000円+税
(『美術手帖』2021年10月号「BOOK」より)