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鉄道でめぐる里山の旅から、アート×SDGsまで。2021年注目の国際芸術祭ベスト7

コロナ禍で多くの芸術祭が延期となり、2021年の開催を予定している。今回はそのなかから注目の芸術祭7つを厳選。なお最新の開催状況や感染症対策については、各芸術祭のウェブサイトを参照してほしい。

「房総里山芸術祭 いちはらアート×ミックス2020+」より、レオニート・チシコフ 7つの月を探す旅「第二の駅 村上氏の最後の飛行 あるいは月行きの列車を待ちながら」

KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2021 SPRING 

新ロゴデザイン

 「KYOTO EXPERIMENT」は、2010年から毎年京都市内で開催されている国際舞台芸術祭。11回目となる今年は、これまでプログラムディレクターを務めた橋本裕介から引き継ぎ、川崎陽子、塚原悠也、ジュリエット・礼子・ナップという3名の共同ディレクターによる新体制が始動。2020年から延期し、「2021 SPRING」として2月3日~3月28日に開催される。

 同祭は3プログラムから構成。「Kansai Studies(リサーチプログラム)」では、dot architectsと和田ながらが3年にわたって「水」をテーマとするリサーチを展開し、その過程をウェブサイトで公開するほか、会期中にはパブリックイベントも開催される。

 「Shows(上演プログラム)」では、小原真史の企画による展覧会や、垣尾優、ナターシャ・トンテイ、音遊びの会×いとうせいこう、ママリアン・ダイビング・リフレックス/ダレン・オドネルらによるプログラムを実施。「Super Knowledge for the Future[SKF](エクスチェンジプログラム)」では様々なトークや上映が企画され、一部はYouTubeでも無料オンライン配信を予定している。

KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2021 SPRING 
会期:2021年2月3日~3月28日
会場:ロームシアター京都ほか市内数ヶ所
実施回数:11回目
共同ディレクター:川崎陽子、塚原悠也、ジュリエット・礼子・ナップ
 

房総里山芸術祭 いちはらアート×ミックス2020+

木村崇人 森ラジオ ステーション×森遊会 撮影=中村脩

 千葉県最大の地域を誇る市原市の全域を会場として開催されてきた「いちはらアート×ミックス」。2020年3月に開催予定だった3回目が延期となり、「いちはらアート×ミックス2020+」として3月20日~5月16日に行われる。

 今回は、初回以来2度目のディレクションとなる北川フラムを総合ディレクターに迎え、「房総の里山から世界を覗く」をテーマとして、市原市の里山や閉校した学校に作品を展開。注目したいのは、小湊鉄道の操車場がある五井駅から終着駅の養老渓谷駅まで、17駅すべてに作品を展開する「駅舎プロジェクト」。100年の歴史を持つ同線の沿線をめぐりながら作品を見ることができるのが大きな特徴だ。

 そのほかにも、廃校リノベーションや車両基地での展示なども開催予定。参加アーティストには、アデル・アブデスメッド、磯辺行久、開発好明、クワクボリョウタ、ウラジミール・ナセトキン、西野達、鈴木ヒラク、竹村京、冨安由真、指輪ホテルなどが名を連ねる。桜と菜の花が咲き誇る里山を電車でめぐる旅を楽しみたい。

房総里山芸術祭 いちはらアート×ミックス2020+
会期:2021年3月20日~5月16日
会場:小湊鉄道を軸とした周辺エリア
実施回数:3回目
総合ディレクター:北川フラム
 

北九州未来創造芸術祭 ART for SDGs

落合陽一 コロイドディスプレイ 2012/2016 KENPOKU ART 2016茨城県北芸術祭

 2030年までに持続可能でよりよい世界の構築を目指す国際目標、SDGs(持続可能な開発目標)。世界各地で様々な試みがなされているこのSDGsとアートをかけあわせた芸術祭「北九州未来創造芸術祭 ART for SDGs」が、4月29日~5月9日、福岡県北九州市を舞台に開催される。

 北九州市は18年、アジア地域で初めてOECD(経済協力開発機構)から「SDGs推進に向けた世界のモデル都市」に選定。会場となるのは東田大通り公園、北九州市環境ミュージアム、北九州市立美術館など市内各所。ディレクターは森美術館特別顧問の南條史生が務める。

 現時点で明らかになっている参加作家は、メディアアーティストの落合陽一や照明デザイナー・石井リーサ明理、片山真理、淀川テクニック、和田永、奥中章人、団塚栄喜。廃材を使ったアート、自然や医療につながるアートなど様々な作品を招致し、新しい学びとエンターテインメントのプラットフォームの構築、そして地域社会に「創造性」というレガシーを残すことを目指す。

北九州未来創造芸術祭 ART for SDGs
会期:2021年4月29日~5月9日
会場:東田大通り公園、北九州市立いのちのたび博物館、東田第一高炉跡、北九州イノベーションギャラリー、北九州市環境ミュージアム、北九州市立美術館など市内各所
実施回数:1回目
ディレクター:南條史生
 

越後妻有アートトリエンナーレ2021 大地の芸術祭

内海昭子 たくさんの失われた窓のために 2006

 日本の国際芸術祭の先駆けとして、2000年から行われてきた新潟県十日町市・津南町の「越後妻有アートトリエンナーレ 大地の芸術祭」。8回目となる今年は、7月下旬~9月中旬に開催予定だ。

 越後妻有では3年に1度だけでなく、季節プログラム「『大地の芸術祭』の里 越後妻有 春/夏/秋/冬」や林間学校、季節の行事など、年間を通じた地域づくりを行っている。今年夏には、コロナ禍で芸術祭のあり方が問い直されるなか、サポーターチーム「こへび隊」が再起動。2021年の開催に向けて準備を進める。

 通年訪れることのできる越後妻有だが、トリエンナーレはすべての作品を一度に鑑賞できる貴重な機会。田園風景とアートに心洗われる一時を過ごしてみてはいかがだろうか。

越後妻有アートトリエンナーレ2021 大地の芸術祭
会期:2021年7月下旬~9月中旬
会場:越後妻有の十日町、川西、中里、松代、松之山、津南エリア
実施回数:8回目
総合ディレクター:北川フラム
 

東京ビエンナーレ2020/2021

ロゴマーク Photo by Masanori Ikeda(YUKAI)

 1952年から90年まで東京都美術館を会場に行われた「東京ビエンナーレ」。とくに中原佑介がコミッショナーを務めた第10回「人間と物質」は、後の美術史に大きな足跡を残したことで知られている。それから50年後、東京都心の北東部を舞台に、新たな「東京ビエンナーレ2020 見なれぬ景色へ ―純粋×切実×逸脱―」が企画された。

 2020年の開催を予定していた同祭だが、新型コロナの影響で名称を「東京ビエンナーレ2020/2021」と改め、コア期間を2021年夏に延期。20年はプレ期間としていくつかのプロジェクトを実施するほか、再調整費・諸維持費のためのクラウドファンディングも行ってきた。

 主催者である「東京ビエンナーレ市民委員会」の共同代表を務めるのは、小池一子(クリエイティブディレクター)と中村政人(アーツ千代田3331統括ディレクター)。行政主体ではなく民間主導の国際展として、「アート×コミュニティ×産業」をキーワードに、地域の人々とともに「見なれぬ景色」としてのビエンナーレをつくり出すことを試みる。

東京ビエンナーレ2020/2021
会期:2021年夏会場:千代田区、中央区、文京区、台東区の4区にまたがる東京北東エリア
実施回数:1回目
 

北アルプス国際芸術祭 2020-2021

目 信濃大町実景舎 「北アルプス国際芸術祭2017」での展示風景 Photo by Tsuyoshi Hongo

 3000メートル級の山々が連なる北アルプス山脈のふもと、長野県大町市を舞台に、2017年に初めて開催された「北アルプス芸術祭」。その2回目が、2020年5月からの延期を経て「北アルプス国際芸術祭 2020-2021」として8月21日~10月10日に開催される。

 地域資源をアートの力で発信することで地域再生のきっかけとなることを目指す同祭のコンセプトは「水・木・土・空~土地は気配であり、透明度であり、重さなのだ~」。水によって育まれた豊かな森と生活文化と、作品を楽しむことができる。総合ディレクターは北川フラム、ビジュアル・ディレクターは「ミナ ペルホネン」デザイナーの皆川明が務める。

 今回は淺井裕介、川俣正、目など、14の国と地域から41組が集結予定。たんなる芸術祭ではなく「人と人をつなぐ地域づくり、人づくりの取組み」としての取り組みに注目したい。

北アルプス国際芸術祭 2020-2021
会期:2021年8月21日~10月10日
会場: 長野県大町市の各所
実施回数:2回目
総合ディレクター:北川フラム
ビジュアル・ディレクター:皆川明
 

奥能登国際芸術祭2020+

ビアス・レーベルガー Something Else is Possible/なにか他にできる 2017 「奥能登国際芸術祭」での展示風景

 能登半島の最北端、日本海に囲まれた「さいはて」の地、石川県・珠洲市。荒々しい外海と、波穏やかな砂浜の内海という2つの海を持ち、美しい岬が形成されるこの地を舞台に行われるのが、「奥能登国際芸術祭」だ。

 2回目となる同祭も2020年9月の開催を延期し、「奥能登国際芸術祭2020+」として開催。コロナ禍の新たな芸術祭スタイルの創造によって、来場者への徹底した安全とより多様な楽しみ方を提供する意味が込められている。新たに「スズ」という文字を冠したロゴは、クリエイティブディレクター・浅葉克己のデザインによるもの。総合ディレクターは北川フラムが務める。

 参加アーティストは、青木野枝、石川直樹、大岩オスカール、金氏徹平、キム・スージャ、サイモン・スターリング、カールステン・ニコライ、ひびのこづえ、アレクサンドル・ポノマリョフなど47組。また、珠洲市の各家庭に眠る「地域の宝」をその記憶や思い出とともに集め、丁寧に読み解きながら整理・分類する「珠洲の大蔵ざらえプロジェクト」も再始動。アートとアーカイブが共存する劇場型博物館の取り組みにも期待が高まる。

奥能登国際芸術祭2020+
会期:2021年9月4日〜10月24日
会場: 石川県珠洲市全域
実施回数:2回目
総合ディレクター:北川フラム

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