『We Don’t Know God Chim↑Pom 2005-2019』
広島の空に「ピカッ」と描いたかと思えば、岡本太郎の壁画にドクロ型の黒煙を「加筆」し、福島の帰宅困難区域では国際展「Don’t Follow the Wind」を企画したりと、ゲリラ的かつポップな活動で世間を騒がせてきたアーティスト集団Chim↑Pomの最新作品集。結成から現在まで過去14年間の活動を網羅し、ホウ・ハンルーや椹木野衣らによる論考を収録。表現としては荒削りなものもあるが、そのストレートさゆえに「公共性」や「表現の自由」といった社会問題を鑑賞者へ突き付けるパワーを秘めている。(近藤)
『We Don’t Know God Chim↑Pom 2005-2019』
Chim↑Pom=著
ユナイテッドヴァカボンズ|5500円+税
『Cosmo-Eggs|宇宙の卵』
第58回ヴェネチア・ビエンナーレの日本館展示にあわせて刊行されたコンセプトブック。地球環境が重大な変動期を迎えている現状を惑星的スケールからとらえ直すべく、4人の表現者が人間/非人間が共存するエコロジーをめぐる「宇宙の卵」プロジェクトを展開。美術家・下道基行による「津波石」のフィールドワーク、音楽家・安野太郎による楽曲のスコア、芸術人類学を専門とする石倉敏明の神話捜索などを収録。写真、テキスト、創作ノートなど、異なる表現形態にあわせたバインダーファイル形式で非常に凝った造本。(中島)
『Cosmo-Eggs|宇宙の卵』
下道基行、安野太郎、石倉敏明、能作文徳、服部浩之=著
LIXIL出版|3500円+税
『ART SCENE 1900 図鑑 1900年以後の芸術』
ロザリンド・クラウスら「オクトーバー」派の論客たちが中心となって編纂した20・21世紀美術の概説書。世界各国で教科書としても使用される定番の書がいよいよ邦訳された。構成は、1900年から2015年までに起こった美術の重要トピックに詳細な解説と図版、コラムを付し、編年体形式でまとめるというもの。欧米の動向が中心だが、日本の具体、ブラジルの新具体主義などへの言及もあり、広い視野からの理解を助けてくれる。同時代に起こった動向、地域を超えた影響関係を検証するためにも手元に置いておきたい一冊だ。(中島)
『ART SCENE 1900 図鑑 1900年以後の芸術』
ハル・フォスター、ロザリンド・E・クラウス、イヴ=アラン・ボワほか=著
東京書籍|12000円+税
(『美術手帖』2019年10月号「BOOK」より)