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ピカソとの日々の回想録から前衛芸術家集団「スペース・プラン」まで。8月号新着ブックリスト(2)

新着のアート&カルチャー本の中から毎月、注目の図録やエッセイ、写真集など、様々な書籍を取り上げる、雑誌『美術手帖』の「BOOK」コーナー。ピカソと生活をともにしたフランソワーズ・ジローの回想録や、鳥取に存在した前衛芸術家集団「スペース・プラン」の記録集など、注目の新刊を3冊ずつ2回にわたり紹介する。

評=塚田優(視覚文化評論家)+中島水緒(美術批評)

『ピカソとの日々』

 その生涯で幾人もの女性と関係したピカソが、唯一家庭らしい生活をともにしたフランソワーズ・ジローの回想録が半世紀ぶりの新訳として再刊された。造形的な記述の水準が高く、マティスをはじめとした作家たちとのピカソの対話がきわめて具体的に記録されている。ブラックとのエピソードにあるようなホモソーシャル特有の駆け引きや、フランソワーズ以前の愛人や妻子との交流のエピソードを知ることは、芸術家であると同時に人間としてのピカソに対する深い理解をもたらしてくれるだろう。(塚田)

『ピカソとの日々』
フランソワーズ・ジロー+カールトン・レイク=著
白水社|6000円+税

 

『森山安英─解体と再生』

 「九州派」の影響から前衛へと身を投じ、1960年代後半「集団蜘蛛」のメンバーとしても活動した森山安英の個展公式カタログ。展覧会やデモといった社会の諸形式を模倣し、それに対して揺さぶりをかけていくグループの活動を、森山へのロングインタビューや写真によってドキュメントする。伝習館救援会結成大会での公然わいせつ罪による逮捕のいきさつ、その裁判記録に加え、80年代後半から始まる絵画制作の再開にも丁寧に解説が付されている。資料としての価値、網羅性ともに充実した一冊。(塚田)

『森山安英─解体と再生』
小松健一郎=著
Grambooks|3500円+税

 

『スペース・プラン─鳥取の前衛芸術家集団1968-1977』

 スペース・プランとは、1968年に谷口俊、フナイタケヒコといったメンバーが鳥取で結成した前衛芸術家集団である。全国的に名が知られる機会こそ少なかったが、近年、展覧会などで再評価の機運が高まっている。本書は編集にあたった筒井宏樹による論考、グループのステイトメント、展示風景、ポスター、新聞評などの資料を網羅して、スペース・プランの全貌を振り返る貴重な記録集。ミニマリズムの文脈に位置づけられる先鋭的な試みがローカルな地で展開された意義の大きさが改めて確認される。(中島)

キャプション

『スペース・プラン─鳥取の前衛芸術家集団1968-1977』
筒井宏樹=編著
アートダイバー|2300円+税

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