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5G時代の映像論から建築短編映画のパンフレット集まで。10月号新着ブックリスト(2)

新着のアート&カルチャー本の中から毎月、注目の図録やエッセイ、写真集など、様々な書籍を取り上げる、雑誌『美術手帖』の「BOOK」コーナー。中山英之による建築を舞台にした短編映画のパンフレット集や現代アートと軍事を手掛かりとした高度情報社会の映像論など、注目の新刊を3冊ずつ2回にわたり紹介する。

評=中島水緖(美術批評)+近藤亮介(美術家)

『政治的イコノグラフィーについて』

現代イタリアを代表する歴史家による2005年の著作の全訳。16世紀の銀杯に施された細工を視覚的・テクスト的に読み解く第一試論のほか、ホッブズの著作『リヴァイアサン』の扉絵から国家の基盤としての「恐怖」の表象を導き出す第二試論、ピカソの代表作《ゲルニカ》の「反ファシズム」的解釈に新たな視座をもたらす第五試論など、近代から現代までの事象を扱った5本の論考を収録。イメージがいかにして政治的効果を演出するのか、ときにヴァールブルクの方法論を継承しながら博学を駆使して考察する。(中島)

『政治的イコノグラフィーについて』
カルロ・キンズブルグ=著
みすず書房|4800円+税

 

『建築のそれからにまつわる5本の映画, and then: 5 films of 5 architectures』

TOTOギャラリー・間での展覧会に合わせて制作された5本の短編映画についてのパンフレット集。中山英之建築設計事務所の設計した住居・仕事場を舞台に、異なる5人が監督した作品は、一見奇妙な建築空間を自在に使いこなしながら暮らす人々を映し出す。個人的に気に入ったのは「家と道」。3人家族の何気ない日常に、ピアノの軽快なリズムがよく合う。建築は建築家の手を離れてからが大切だということを気づかせる。映画はオンライン公開されているので、ぜひ体感してほしい。(近藤)

『建築のそれからにまつわる5本の映画, and then: 5 films of 5 architectures』
中山英之=著
TOTO出版|3300円+税

 

『インフラグラム 映像文明の新世紀』

「インスタグラム」をもじった写真論ではない。現代社会に不可欠な写真・動画を「インフラ」と見なし、無数の眼差しが見つめる世界の現状について考察する挑戦的な映像論である。手掛かりとなるのは、現代アートと軍事だ。著者は、メディア・アーティスト三上晴子を道標に、世界各地の写真・映画・展覧会を分析すると同時に、映像の発展を裏で支えてきた軍事の歴史も明らかにしてゆく。日常で目にすることのない映像の存在から、高度情報社会の可能性と危険性が見えてくる。(近藤)

『インフラグラム 映像文明の新世紀』
港千尋=著
講談社選書メチエ|1700円+税

『美術手帖』2019年10月号「BOOK」より)

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