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INSIGHT - 2016.12.30

2016年展覧会ベスト3(東京都現代美術館学芸員・藪前知子)

数多く開催された2016年の展覧会のなかから、3名の有識者にそれぞれもっとも印象に残った、あるいは重要だと思う展覧会を3つ選んでもらった。今回は東京都現代美術館学芸員・藪前知子編をお届けする。

Chim↑Pom Live Camera of SUPER RAT -Diorama Shinjuku- 2016 © Chim↑Pom Courtesy of the artist and MUJIN­TO Production, Tokyo photo by KENJI MORITA

Chim↑Pom『また明日も観てくれるかな?』
〜So see you again tomorrow, too?〜
(歌舞伎町振興組合ビル、2016年10月15日〜31日)

Chim↑Pom ビルバーガー 2016 photo by KENJI MORITA © Chim↑Pom Courtesy of the artist and MUJIN­TO Production, Tokyo

地域で展開されるアート・プロジェクト/国際展が増加し、芸術表現が、現れる空間の文脈との関係において生成し鑑賞されることが当たり前になった時代に、その意味を、いま・ここにそれと向き合う体験のアクチュアリティとともに改めて突きつけてくる展覧会が強く印象に残った。

Chim↑Pomは、新宿・歌舞伎町の交番の真向かいという、ホワイトキューブからは最も遠い猥雑な場所で、ふたつの東京オリンピックを結びつけ、都市の生成のサイクルを鮮やかに語る空間をつくり出した。安全に整備される都市空間の中で失われていく生の体験を、リスクと引き換えに公共的空間とアートの現れる場所との根本的な矛盾を露にさせつつ引き出したことは、偶然にもその閉幕直後に起こった「東京デザインウィーク」での悼ましい事故と併せて、重い問題提起を私たちにもたらした。

杉戸洋―こっぱとあまつぶ
(豊田市美術館、2016年7月15日~9月25日)

展示風景 撮影=市川靖史

杉戸洋の個展は、豊田市美術館の端整なホワイトキューブの特性を種々の手法で揺るがせ、別の場所への入り口として転化させながら、絵画がいま、私たちの生といかに地続きに関係を結びうるかを切実な問いとして示した。今後の絵画の展覧会の可能性を拓いたと言えるのではないか。

パープルタウンにおいでよ
(パープルーム予備校・パープルーム見晴らし小屋・ゼリー状のパープルーム容器、2016年7月10日〜23日

パープルーム予備校の「パープルームの胃袋」展示風景 Photo by Fuyumi Murata

梅津庸一を中心とするパープルームの一連の仕事は、芸術の諸様式が、個と普遍の間を揺れ動きつつ形成されてきた歴史的事実を援用しながら、集団生活の中に芸術の生成を賭けるアナクロニックな実験として注目に値する。その全貌は、制作と生活が一体化した彼らの居住地でしか共有しえないという点で、そこで展開されたこの展覧会の重要性を記しておきたい。

PROFILE
やぶまえ・ともこ 東京都現代美術館学芸員。1974年生まれ。主な担当企画に「大竹伸朗 全景 1955-2006」(2006年)、MOTコレクション「特集展示 岡﨑乾二郎」(2009年)、「山口小夜子 未来を着る人」(2015年)、「おとなもこどもも考える ここは誰の場所?」(2016年)など。「札幌国際芸術祭2017」(2017年)では企画メンバーとして参加。

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