EXHIBITIONS

荒川修作「BOTTOMLESS—60年代絵画と現存する2本の映画」

SCAI PIRAMIDE
2021.04.22 - 05.29

荒川修作 BOTTOMLESS No.1 1965 © 2020 Estate of Madeline Gins. Reproduced with permission of the Estate of Madeline Gins

荒川修作 My properties 1969 © 2020 Estate of Madeline Gins. Reproduced with permission of the Estate of Madeline Gins

荒川修作《Why Not (A Serenade of Eschatological Ecology)》(1969)のスチル
black and white 16mm film transferred to DVD, 110 minutes
© 2017 Estate of Madeline Gins. Reproduced with permission of the Estate of Madeline Gins and Reversible Destiny Foundation

荒川修作《For Example (A Critique of Never)》(1971)のスチル black and white 16mm film transferred to DVD, 90 minutes
© 2020 Estate of Madeline Gins. Reproduced with permission of the Estate of Madeline Gins

 SCAI THE BATHHOUSE(谷中)とSCAI PARK(天王洲)に続く新たなスペース、SCAI PIRAMIDEが六本木にオープン。こけら落としは、荒川修作の個展「BOTTOMLESS—60年代絵画と現存する2本の映画」を開催する。

 荒川は1936年名古屋市生まれ。60年に吉村益信、篠原有司男、赤瀬川原平らと前衛芸術グループ「ネオ・ダダイズム・オルガナイザーズ」を結成するも、同年に離脱。61年に渡米し、翌年に共同制作者でありパートナーともなるマドリン・ギンズと出会う。以後、ニューヨークを拠点に活動。68年にドイツ・カッセルで開催された国際展「ドクメンタIV」に参加、70年の「第35回ヴェネチア・ビエンナーレ」では日本館代表として「意味のメカニズム」シリーズを発表し、世界的に注目を集める。

 77年には大規模個展がクンストハレ・デュッセルドルフを皮切りにヨーロッパを巡回し、同年、再び「ドクメンタVI」(カッセル)に招かれる。日本では79年に初めて、ヨーロッパ巡回展に準ずる本格的な個展が西武美術館(東京)で開かれた。2010年ニューヨークにて逝去。作品はメトロポリタン美術館(ニューヨーク)、ニューヨーク近代美術館、テート・モダン(ロンドン)、ポンピドゥー・センター(パリ)など世界各地の美術館に多数収蔵されている。

 本展では、没後10周年を経て再評価の高まる、荒川の初期作品を取り上げる。

 出品作のひとつ《BOTTOMLESS No. 1》(1965)は、上下に引き伸ばされ底部が開いた立方体が描かれた平面作品。フリーハンドで引かれた図形は、得体のしれない巨大な装置のようであり、血液や精神の内部が流れ出てしまう身体を意味すると言われている。鑑賞者を導き入れる矢印や機械的なダイヤグラム、日常のイメージやタイポグラフィが配された荒川による「図形絵画」の多くは大きなキャンバスに描かれ、身体的に知覚し思考できるようにつくられており、シリアスな厳格さと奇妙な仕掛けのはざまで、見る者は新たな認識を促される。

 また本展は、ギンズとの共同制作である2本の実験映画を公開。《Why Not(A Serenade of Eschatological Ecology)》(1969)は、裸の女性が部屋にあるドアやテーブルと格闘し、閉鎖空間における身体パフォーマンスのように存在の在り方を問う。いっぽう《For Example( A Critique of Never)》(1971)では、前作の主題をさらに突き詰め、ニューヨークの路上を徘徊するホームレス少年の身体と周囲の環境の変化を記録し、そこに荒川とギンズのテキストを繰り返し重ねられている。

 キャンバスやスクリーンに飛び交う記号論的なアイデアの数々によって、新たな理解の手段を得ようとした荒川。本展はアーティストの若き日の試みを知る好機となる。

 なおSCAI PIRAMIDEは今後、現代のアートシーンのさらなる交流と進展を育むこと、そしてギャラリーの既存の枠組みを超えて新たな切り口を提示し、時代に即したコンテクストの更新を図ることを目指していくという。