EXHIBITIONS

玉山拓郎「Intervenes / Light and Table / Sound as Time / Hole」

2025.03.15 - 04.12
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メインヴィジュアル

 ANOMALYで、玉山拓郎による個展「Intervenes / Light and Table / Sound as Time / Hole」が開催されている。

 玉山拓郎は1990年岐阜県生まれ。愛知県立芸術大学を経て、2015年に東京藝術大学大学院を修了。現在、東京を拠点に活動。ファウンド・オブジェクトを用いたスカルプチャー、重力のズレを模倣した展示構成、映像や音響、そして鮮烈な照明(または無照明)によって絵画的空間を創出するなど、最小の異化によって空間体験そのものをダイナミックに変えるアーティストだ。

 谷口吉生設計の豊田市美術館で現在開催中の個展「FLOOR」は、誰も同じ作品体験をすることはない、個別の体験を可能にしている。かつて空間をコントロールしていた玉山が、その手を離すことで、自然、すなわち太陽の傾きや地球の自転、ひいては「時間」を獲得したように感じさせるものとなっている。

 この「FLOOR」に呼応するかたちで東京で開催される本展は、一見すると未完成の展覧会を思わせる。これは、アーティストが能動的に展覧会を構成するのではなく、周囲の環境、作品(≒モノ)、そして関わる人といった状況をそのまま取り入れることで、本展の完成を試みるというもの。主体的に空間を構成し、作品の配置を決めるという行為は、どのアーティストにも共通するもので、玉山もミリ単位の精度で空間を構成し作品の配置を決定してきたが、今回はそのコントロールを放棄し、逆のアプローチを採用。また、偶発的な操作(チャンスオペレーション)や他者の意思によって形づくられることで、本展の展示が成立することになっている。ただし、本展で発表する作品そのものは、これまでと同じミリ単位の精度で制作されることから、他者性に満ちた空間との奇妙なギャップが生まれている。

 なお、今回同廊で同時開催されている2つの個展は、玉山拓郎と永田康祐のそれぞれが「個展」という形式に則った独自の空間を構成しつつ、玉山の呼びかけにより、お互いの作品がそれぞれの空間へ介入しあう。