EXHIBITIONS

吉田紳平「My husband」

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2024.11.30 - 12.22
 hide galleryで吉田紳平の個展「My husband」が開催される。

 吉田は1992年奈良県生まれ。2014年に京都芸術大学(旧京都造形芸術大学)洋画コースを卒業した。おもな展覧会は「Absence of bedroom - ベッドルームの不在」(GALLERY crossing /岐阜、2023)、「Our silence」(京都岡崎蔦屋書店/京都、2024)、 「グループ展」(タカイシイギャラリー/前橋、2024)など。

 本展では、吉田の顔とも言えるポートレートシリーズの油彩画に加えて、ギャラリーの空間に呼応したインスタレーション作品を展示。吉田の作品は「存在と不在」「記憶と忘却」といったテーマに深く根ざしており、とくに自身の祖母の死にまつわる体験から影響を受けたポートレートシリーズは、生命のはかなさと、時間のかさみを静かに浮かび上がらせる。

 本展に際し、吉田は以下のステートメントを発表している。

「私のポートレートシリーズの起点のひとつは2017年に訪れたハンブルクのフリーマーケットでの古い家族写真との出逢いにある。それらの写真は数十枚におよび、そのどれもがごくありふれた家族の日常を写したものであった。赤子の顔を覗き込み微笑む母親らしき女性の横顔、庭で遊ぶ子どもたちや食卓を囲む和やかな夕食の風景。森の小道を歩くだれかの後ろ姿。

 いつかの時代、遠く離れたどこかの街の、ある家族がたしかに存在し懸命にその人生を生きていたことが誰からの目にも留まることなくこの世界から忘れ去られていたことに静かに感動したのを憶えている。わたしたちはすでに皆の目の前にあるのに、まだ気づかれておらず名前さえ持たないものを見る視力を持っていながら、その存在に気づきにくい世界を生きている。

 あたかも『見えているもの』はすべて他者と共有可能であるとするような現代において、わかりにくいこと、忘れられてしまったもの、目に見えないものの危うさを問いかけることは容易なことではない。私にとって、かつて彼らがまなざしていたはずの景色や、頬に触れたはずの温もり、彼らが日々互いに交わしたはずの親密な言葉に耳を澄ませることはそうした不透明な世界の在り方に少しでも寄り添うためのささやかな手助けとなるのかもしれない」。