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EXHIBITIONS

企画展

開館記念展「旅するジョウモンさん-5千年前の落とし物」

豊田市博物館
2024.10.12 - 12.08

深鉢形土器(火焔型) 国宝 笹山遺跡出土 新潟県十日町市 十日町市博物館蔵 撮影:小川忠博

 豊田市博物館で、開館記念展「旅するジョウモンさん-5千年前の落とし物」が開催されている。

「縄文」は、人の心を映す鏡のような存在。かつては、縄文土器の特異なデザイン性について、グロテスクで野蛮なものとして顔をしかめる人も多くいた。その背景には、植物採集や狩猟に生活の基盤を置いた縄文人が、多くの狩猟採集民と同様に、農耕を暮らしの中心に据える人々と比べ、その日暮らしの劣った存在として評価されていたからだ。これは、日本が、稲作と米の絶対的な存在で進歩したとする古い歴史観を写し出したものとなる。

 しかし戦後、例えば、芸術家・岡本太郎(1911〜1996)のように、縄文土器は、仏教など外来の美術様式の影響にとらわれない、日本独自の誇るべき存在と評価する人が出現した。また、1990年代のバブル崩壊後、三内丸山遺跡などの発掘成果により、縄文人は、狩猟採集民としては異例の、大規模かつ高水準の生活文化を持ちえていたとの考えも示された。縄文は、敗戦や景気後退でうつむく日本人の心に、希望の光をもたらした。

 近年、縄文のデザインは、自由で可愛い、親しみやすいポップな魅力に溢れた存在として、若い世代を中心に広く受け入れられている。曲線を中心とした、生物的で奇妙な土器の文様。また、愛らしい土偶の表情は、マンガやアニメ、ゲームなどにも欠かせないデザインとして、私たちを楽しませてくれている。その暮らしぶりと環境問題やSDGsなどの現代的課題とを結びつける論調からも、「縄文」は、数千年を越えて対峙する、私たちの願いを込めて語り上げられる対象となっている。

 しかし、縄文時代に心を寄せながら、私たちは、日本各地で地方色豊かにその文化が花開いたことを、さほど知ってはいない。

 本展は、2024年4月26日に開館した豊田市博物館の最初の展覧会となる。同館は、展覧会について、地域をきっかけに日本や世界を知る、日本や世界を知ることで地域を見直し、新しい力が生まれる機会にしたいとしている。