EXHIBITIONS

開館30周年記念

マルセル・デュシャンを考える

2024.09.05 - 11.10

若江漢字 「大ガラス」補注-3つの解釈 2015〜2019

 カスヤの森現代美術館で、開館30周年を記念した展覧会「マルセル・デュシャンを考える」が開催されている。

 おおよそ100年前、先駆的なアプローチでそれまで誰も目にしたことのない作品を提示し話題を集めたマルセル・デュシャン。作品の性質や作家自身の振る舞いの特異性から、そのセンセーショナルな部分ばかりがクローズアップされることが多いが、残された作品は現在もその輝きを放ち続け、後の作家にも多くの影響を与えている。本展は、作品とともに残された様々な謎や意図について改めて考察してみようと試みるものとなっている。

 会場では、《彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも》(通称:大ガラス)をキリスト教絵画として読み解いた絵画作品や大ガラスのなかで「独身者たち」とされ描かれた図形をモチーフにつくられた若江漢字によるチェスの駒などを展示。マルセル・デュシャンの版画作品や、"Boîte-en-valise"(トランクの中の箱)のレプリカや資料などをあわせて展覧している。

 デュシャンの作品はたんに視覚的な驚きや表現の奇抜さを狙ったものではなく、そのなかには哲学的、宗教的、数学的(科学的)な要素を内包している。その作品が持つ多層的な意味や、デュシャンが芸術に対して提示した問いかけの深さを再確認する。