紫綬褒章をはじめとする数多くの賞を受賞してきた写真家・奈良原一高。今回、その個展「Rrose Sélavy」が、東京・六本木のタカ・イシイギャラリー ビューイングルームで開催される。会期は11月1日〜12月21日。
奈良原は1931年福岡県生まれ。検事であった父親の転勤に伴い、国内各地で青春期を過ごした。46年に写真撮影をスタートさせる傍ら、芸術や文学などにも関心を寄せ、54年に中央大学法学部卒業後、早稲田大学大学院芸術(美術史)専攻修士課程に入学した。
55年には池田満寿夫、靉嘔ら新鋭画家のグループ「実在者」に参加した奈良原。池田龍雄や河原温といった芸術家や、瀧口修造らとも交流を深めると同時に、写真家の東松照明、細江英公らと知り合い、59年には、東松、細江とともに写真に関するセルフ・エージェンシー「VIVO」を設立した。
その後もパリ、ニューヨークと拠点を移しながら世界各地を取材しながら、多数の展覧会を開催。主な個展に「Ikko Narahara」(ヨーロッパ写真美術館、パリ、2002〜03)、「時空の鏡:シンクロニシティ」(東京都写真美術館、2004)、「王国」(東京国立近代美術館、2014〜15)などがある。
奈良原は、70年代に瀧口の依頼により、アメリカ・フィラデルフィア美術館に所蔵されているマルセル・デュシャンの《彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも》(1915〜23)を撮影。一連の写真群は、『デュシャン大ガラスと瀧口修造シガー・ボックス』としてまとめられ、91年にみすず書房より出版された。
本展では、この「大ガラス」シリーズより代表的なイメージ7点を収録し、2018年に刊行された写真のポートフォリオ『Rrose Sélavy』を展示。奈良原と親交のあるアーティスト・岡崎和郎がセレクトしたという7枚を、クリスタルプリントで透明かつ色鮮やかに甦らせる。
またポートフォリオの装丁は、同じく奈良原と親交の深い勝井三雄が手がけており、奈良原の写真作品の再考に加え、奈良原を中心とした勝井と岡崎の関係、またその背後のデュシャンと瀧口という、作品を巡る様々な関係性を想起させるものとなる。
また奈良原は、本展と同時期に、タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルムでも個展「星の記憶」を開催する。こちらもあわせてチェックしたい。