フィラデルフィア美術館、ポンピドゥー・センター、マルセル・デュシャン協会が、デュシャンのオンライン・リサーチ・ポータルサイトを共同で開設した。
このサイトは、フランスとアメリカの3機関による7年間のパートナーシップから生まれたもの。デュシャンの作品や人生、彼の個人的なネットワーク、そしてキュビスム、ダダ、シュルレアリスムなどの前衛芸術コミュニティとのつながりに関連する1万8000点以上の資料や作品を、約5万点のデジタル画像で網羅している。
1950年、デュシャンの主要なパトロンであるルイーズ&ウォルター・アレンスバーグ夫妻が彼らの優れたデュシャン・コレクションをフィラデルフィア美術館に寄贈。それによってデュシャンの作品のほとんどがひとつの機関にまとまって収蔵されることになり、同館では、初期の作品から通称「大ガラス」の代表作、レディ・メイド、そして遺作の《(1)落下する水、(2)照明用ガス、が与えられたとせよ》などのハイライトを常設展示している。
いっぽうのポンピドゥー・センターは、絵画や自筆ノート、マン・レイによるデュシャンの写真コレクションなど、デュシャンの全キャリアをたどることのできる包括的な作品群を収蔵している。
今回のサイトでは、2館に所蔵されている500点以上のデュシャンの作品画像や、1973年にフィラデルフィア美術館で、77年にポンピドゥー・センターで開催されたデュシャンの大規模な回顧展、そして遺作の制作と設置などに関連する資料に無料でアクセスできる。
フィラデルフィア美術館館長兼CEOのティモシー・ラブは声明文で、「この素晴らしいリソースを、世界中のオンラインの観客と共有できることを、大きな誇りと喜びに感じています。前世紀のもっとも革新的な芸術家のひとりに魅了された世界中の研究者にとって、発見という行為を可能にしてくれます」と述べている。
ポンピドゥー・センターの館長グザビエ・レイは、次のようなコメントを寄せている。「このプロジェクトは、作品と作家が残した資料の両方が非常に豊富であることから、我々にとっては当然の選択でした。デュシャンをめぐる批判的思考の文脈は、このポータルを今日、さらに基礎的なものにしています。ジャン・クレールが『偉大な虚構の人』(Le grand fictif)と呼んだ芸術家デュシャンも、友人たちがつくったバーチャルな世界に身を置くことを喜ぶに違いないでしょう」。