市川慧「fish story」

　tagboatで、市川慧による個展「fish story」が開催されている。

　市川は現在、東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻に在学中で、同廊では史上最年少での個展開催となる注目の若手作家だ。

　西洋絵画の写実的な技法と日本の絵画に見られる超平面的な表現を融合させ、現代社会の混沌のなかで「欠落」を感じながら生きる人々を象徴するモチーフを描いている。背広姿のAKIO（市川の作品に登場する代表的なキャラクターでモデルは市川の祖父）や二次元で描かれる魔法少女といったキャラクターが混在するミスマッチが、独特な魅力と不安感を与えている。

　本展では、2023年に開催された自主企画展「ROOM206 Vol.2 – Nine Fish Stories」からの流れを汲んだ作品群を中心に、作家の核となる存在「AKIO」が登場し、現実と虚構が交錯する独自の世界観が展開される。100号の絵画作品に加え、シルクスクリーンを含めた新作約15点を出展。現代社会の象徴的なモチーフや、若い世代の心理的な葛藤を見る。