ユ・チェンタ「Fancy Fantasy!」

　AWAKEで、ユ・チェンタによるイベント「Fancy Fantasy!」が開催される。

　《Fancy Fantasy!》（ファンシーファンタジー！）は、台北を拠点に活動するアーティスト、ユ・チェンタによるミュージックビデオ制作プロジェクトであり、それを題材とした3日間限定で歌舞伎町にオープンするホストクラブである。歌舞伎町を舞台に、変わりゆく身体とペルソナが交差するファンタジーへと来場者を招き入れ、ヘテロ中心の恋愛規範に回収されないクィア・ロマンスに祝福の光をあてるものとなっている。

　本プロジェクトでは、アーティスト、ミュージシャン、ダンサーたちが、プロのホストとして加わり、パフォーマンスやストーリーテリングを通じて彼らが望むペルソナを体現。協調的かつ自発的な一連の参加型介入を通し、舞台の上と観客フロアが一体となることで「Fancy Fantasy! 」は個々のジェンダーを開発する創造性と探求心を駆り立て、ソーシャルかつ批評的な体験を通じて東京の文化コミュニティに強く結びつくことを目指す。

　Fancy Fantasy! クラブを取り持つのは、インフルエンサーであり歌手としての顔を持つFAMEME（ファミミ）だ。本プロジェクトのアーティスト、ユ・チェンタの分身である彼は、家業であるドリアン農業の振興のためにドリアン美術館を設立し、ドリアン香水の開発をする実業家となっている。現実とフィクションの境界を曖昧にすることは、ユの活動の中心的な課題であり、そうして「構築されたリアリティー」が立ち上がる。本プロジェクトでは、この想像プロセスの具現化として架空のキャラクターを一堂に召喚しながら、PR用のモック広告や「男本」、FAMEMEブランドの派生商品など、フィクションを物質化する一連の制作が並行して行われた。

　本プロジェクトのために制作されたミュージックビデオ《Fancy Fantasy!》（作曲：YukaO.、作詞：手塚マキ、映像：片山マテウス、2024）は、「BL（ボーイズラブ）」マンガの定型を組みあわせ、ホストクラブでの出会いから生まれる同性感の高揚を劇化する映像作品だ。

　《Fancy Fantasy!》では、市場志向の疑似的な恋愛体験をクィア化の視点から解きほぐし、現実と虚像を多重露光することで、既存のカテゴリにあてはまらないエネルギーと欲望をあぶり出す複合メディアのプロジェクトが展開される。