尾潟糧天「1 / 356000」

　MJK Galleryで、尾潟糧天による個展「1/356000」が開催されている。

　人と自然の関係性を基軸とし、海をモチーフとした作品で知られる新進気鋭のアーティスト・尾潟糧天。多様な視点を用いて自然との境界を見つめ直し、既存の風景のとらえ方を変容させ、テクノロジーの手法にもとづいた独自の制作プロセスを生み出している。

　本展では、これまで尾潟が作品を制作するうえで用いてきた記憶の装置としてのアプローチから発展し、経験にもとづいた物理・気象的な分析・調査をもとに制作された作品を展開。ドローンを活用した制作プロセスは、波の物理的な生み出され方を細かく分析し、実際の海を地形的な座標、風速、風向き、波の流れといった側面をあらわにしたうえで切り取られる。

　また、波だけでなく、岩場の環境から地域の風土といった周縁環境は、実際のフィールドワークで尾潟自身の目を通して作品プロセスに内包されている。展示作品は、自然環境を把握し制御しようとする人間の本能的な態度に挑み、自然のもつ神秘性、不可解さ、畏怖の念といった人間の理解を超えた自然の情景を写しとる、いわば写経のような作業から生み出されているものとなっている。