UN-FIT

　The 5th Floorで「UN-FIT」が開催されている。

　一人ひとりによってつくられる社会。私たちはそれぞれ、パブリックおよびプライベートの空間で異なる立ちふる舞いをする。しかし個々人が集うことで社会のなかで規範がつくり上げられ、ある人はその内側、ある人はその外側へと置かれる。そして外側とされた人々が経験する一人称的な体験や世界観は、社会から周縁として追いやられるいっぽう、規範と権威が結びつくことで、つねに内側とされた人々の意見や価値観を基礎に様々な制度が築かれる。こうした周縁化の繰り返しというダイナミクスから、私たちはいかにして逸脱することができるのか。

　本展は、ベルリンを拠点に活動するアーティスト、アントワン・メルメ、ジョアキム・ペレス、ニットサン・マーガリオットの3名が参加し、クィアとしての多元的な声に焦点をあてた表現を紹介。都市あるいは親密な空間を巡る彼らの一人称的な語りは、「FIT（適合）」と「UNFIT（不適合）」、あるいは両者のはざまから社会をとらえ直すきっかけとなるだろう。

　また、本展では、それらの境界線を少しずつずらす試みとして、鑑賞者を当事者視点によってとらえられた世界へと巻き込み、その参加から新たなアーカイブを構築することを目指す。それにより、未来の「あたりまえ」をかたちづくる責任を、いまを生きる一人ひとりに共有する。