EXHIBITIONS

アキ・ルミ「トレース・パニック」

MORI YU GALLERY KYOTO
2024.05.18 - 07.07

Complex building 2021 210 × 190 cm painting, ink and graphite drawing, kraft paper, canvas

 モリユウギャラリーで、アキ・ルミによる個展「トレース・パニック」が開催される。

 アキ・ルミは東京都生まれ、1993年よりパリ在住。「人は何をつくり、知見を得、世界をつくり上げ獲得してきたのか」という問いと反省にもとづき、写真、デッサン、タブロー、コラージュ、コンピュータによる計算によって制作してきた。作品制作の道具は絵筆、ペン、定規、コンパス、ハサミ、銀塩写真プロセス、電卓、コンピュータ。古代の石画に描かれた世界創造の神、人頭蛇身の伏羲と女媧の手には定規とコンパスが握られている。

 展示作品《Fract-graph》のタブローの主体は建築物であり、そこに様々な道具によって人の世界認識がレイヤーとして幾重にも重ねられている。白い画布にコラージュされたクラフト紙、鉛筆デッサン、建築パース、そして黄金の滝。さらに重ねられるのは細いペンによって引かれた直線と幾何学図形。今回は新しいドローイングのシリーズも展示される。それらの中心には建築にかわり畏れの念から生まれた石像たちが震えるような赤い線で描かれ、画面の奥より浮かび上がってくる。

 アキ・ルミは「高層ビルもゴジラも親は一緒。同じ半導体から生まれた」と語っている。限られた手段とシステムで世界を見る人間。無限に絡みあう世界をトレースできるのか。そのような問いを発する機会を本展では提供する。

 写真作品「The Garden」シリーズは数百枚の写真を組みあわせつくり上げられたフェイク・フォトだ。世界各地の森や公園から集められた植物の写真が縮尺を無視して建築写真の上に高密度に貼り込まれている。基材となる建築物は宗教建築の内部。ハサミと糊とコンピュータを往復してつくられたパラダイスが銀塩写真として出現する。