ルー・ヤン「DOKU The Flow」レポート。仮想世界の瞑想が「空(くう)」の教えに接続するとき

パリのフォンダシオン・ルイ・ヴィトンで、上海と東京を拠点に活動する中国人アーティスト、ルー・ヤン(1984年中国生まれ)の個展「DOKU The Flow」が始まった。本展は、フランスの文化施設におけるルー・ヤンの初個展。会期は9月9日まで。

文=島田浩太朗

ルー・ヤン DOKU The Flow 2023 4Kヴィデオ・サウンド 50分15秒Courtesy the artist and Société, Berlin.

 パリのフォンダシオン・ルイ・ヴィトン(以下、FLV)で、上海と東京を拠点に活動する中国人アーティスト、ルー・ヤン(1984年中国生まれ)の個展「DOKU The Flow」(2024年4月6日〜9月9日)が始まった。近年、ドイツ銀行アーティスト・オブ・ザ・イヤーに選出され、森美術館やニューヨークのタイムズ・スクエアでのスクリーニング、ヴェネチア・ビエンナーレなどの国際展への参加など、アジアと欧米で高い評価を受けてきたルー・ヤンだが、今回はフランスの文化施設における初個展となる。FLVオープン・スペース・プログラムの一環として発表された新作《DOKU The Flow》は、三途の川の手前に広がる賽(さい)の河原の石積みを想起させ、あの世とこの世(あるいは、仮想世界と現実世界)のあいだの静けさに包まれた内省的な風景と、その奥に開いた大きな窓(大型スクリーンとサウンド)によって構成されるインスタレーションである。

 ルーの作品は、人間の身体と精神のデジタル化に関する継続的な関心に根差しつつ、マンガ・アニメ、アイドル、コンピューターゲームなどの現代日本のポップカルチャーと、仏教思想、さらに最新テクノロジーを融合させたスタイルで知られている。彼女は、毎日のようにお経を唱える祖母のもとで3〜4歳頃から仏教に親しみ、10歳頃には天国と地獄の記述に触れたことで本格的な興味を持ち始めたという。やがて、この教えが非常に高度な哲学思想体系であり、精神的な自由への可能性を最大限に与えてくれるものであると考えるようになった。

 2000年代に杭州の中国美術学院で、中国現代美術界におけるビデオアートのパイオニアであるジャン・ペイリー(1957年中国杭州生まれ)に師事したルーは、その後、3Dモデリングやモーションキャプチャーなど最新のデジタル技術を導入し、デザイナー、作曲家、心理学者、ダンサー、エンジニア、科学者など、異分野のプロフェッショナルとの協働による制作チームを整えることで、没入型の映像インスタレーションを展開するようになる。

ルー・ヤン DOKU The Flow 2023 4Kヴィデオ・サウンド 50分15秒
Courtesy the artist and Société, Berlin.

「DOKUはホログラムである。それは私であって、私ではない」。

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