EXHIBITIONS

Group Photo Exhibition of German Photographers

ノミ・バウムガルトル、スベン・ニーダー、マイケル・ニッケ「FROZEN SCULPTURES」

気候変動が残した痕跡からみる、地球の美しさと危うさ。

2024.04.05 - 04.27

ノミ・バウムガルトル 2024

マイケル・ニッケ 2024

 ギャラリー冬青で、ノミ・バウムガルトル、スベン・ニーダー、マイケル・ニッケによる展覧会「FROZEN SCULPTURES 気候変動が残した痕跡からみる、地球の美しさと危うさ。」が開催されている。

 Stella Polaris Ulloriarsuaq は、10年にわたり世界中の観客を魅了してきた先見性のある写真アートプロジェクトだ。写真家、ノミ・バウムガルトルが率いるこの国際的なアートの試みは、グリーンランドの氷の広がりの核心に迫り、その幽玄な美しさと憂慮すべき危うさをとらえている。

 2012年から2013年にかけて実現したStella Polaris Ulloriarsuaq は、息をのむような写真と映像を通して、グリーンランドの消えゆく氷を記録し、私たちの環境に対する意識を痛切に映し出している。ノミ・バウムガルトルが尊敬する写真家スべン・ニーダー、映像作家ヤトリ・ニーハウス、グリーンランド人コーディネーターのラーリ・リバースらを含む彼女のチームは、人間と機材が限界に達するような過酷な状況下で、凍てつく地形をナビゲートする。

 2014 年現在、Stella Polaris Ulloriarsuaqの写真、映像作品と深遠なメッセージは、写真集と国際的な展覧会を通じて広まっている。『Stella Polaris Ulloriarsuaq』は国境を越え、私たちの惑星にある氷の領域の微妙なバランスについて熟考するよう視聴者を誘い、環境スチュワードシップに向けた行動を後押しする。

 いっぽう、スヴァールバル諸島は、北極海に浮かぶノルウェーの群島。ノルウェー北岸と北極のほぼ中間に位置する。最大の島はスピッツベルゲン島で、最大の集落はスピッツベルゲン島の⻄海岸にあるロングイヤービエンと言われる。

 ノルウェーの学校に通っていたドイツの写真家、マイケル・ニッケと彼のチームは、2011年にスピッツベルゲン島を訪れた。彼が現地で写真撮影をしたその年は、気候変動が影響を及ぼす前であった。それから時が経ち、2022年の夏は例外的に気温が上昇したため、スヴァールバル全域で記録的な雪解けが起こっていた。スヴァールバルに住み、そこで働く人々にとって、それは危機的状況である。また、海氷の喪失は、ホッキョクグマがより空腹になり、餌を求めて人間の居住地に近づき始めたことをも意味する。

 今日、ロンヤービエンは世界で最も北に位置する町であるだけでなく、最も急速に温暖化している町でもある。研究によれば、スヴァールバルは世界平均の6倍の速さで温暖化しているという。こうした事実から、この地域は気候研究者たちに、北極圏のほかの地域に何が起こるかを予見させる。

 マイケル・ニッケは Hasselblad X-Pan カメラを使ってスピッツベルゲン島の美しい風景とロングイヤービエンの現状を撮影した。その空間は、果てしない深さと広さであり、このカメラのパノラマ技術でしか十分にとらえることができない。ほとんどの写真家は氷河の色彩に屈するが、マイケル・ニッケにとってはモノクロの表現により風景をとらえた。作家はこのユニークな資料のなかから最も印象的なモチーフを選び、日本で初めて発表する。